5.3 水 質


Q150
途上国では、飲料可能な給水よりも「量 の確保」ができればよいという考え方をする国がありますが、どう対処すべきですか





  Key words:水質、水質基準

〈「量の確保」は通過点〉
 水道にとって質と量は車の両輪にたとえられており、質を無視して「量の確保」だけできればよいという考えは避けるべきです。日本のように清浄で安全な水を蛇口から直接飲む水道システムを一挙に構築することは、建設費やそれに伴う膨大な維持管理費を利用者に押しつけることになり、所得の低い途上国の住民に、直接それらを負担させることは現実的には難しい状況にあります。
 したがって、政府などにそれらを負担する財政的余裕がない場合は、ある程度の水質レベルを確保したうえで、「量 の確保(普及)」を優先事項として考えることはやむをえないと考えます。
 しかし、「量の確保」ができればよいという考え方には、
(1)汚染を受けた水道水を媒介とする水系感染症が流行するおそれがある
(2)さまざまな有害汚染物質を飲用し続けることにより、後年になって、これに起因する人体の障害を引き起こす可能性がある
(3)水道技術がいつまでも育たない
などの問題があります。
 このことから、供給者は、たとえば水道水中に大腸菌が検出されたときは、利用者に対し、コレラなどの水系感染症の病原菌に汚染された危険性があり、煮沸してから使用しなければならないことを知らしめるなど、使用する水の特性について十分にPRし、認識させる必要があります。
 また、あわせて、最低限の水質基準として、病原菌の有無のほか、
(1)給水水質の濁り、色度が、使用の支障とならない程度に低く抑えられていること
(2)急性・慢性毒性について、問題のないことが確認されていること
を遵守する必要があります。
 日本において生活の向上や産業発展が図られたのは、安全な水の供給が受けられるという充実したインフラストラクチャーに支えられてきたからであり、「量 の確保」は、あくまでも通過点であるという認識をもつことが必要と考えます。

(田中 芳章)

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