5.6 浄水場の維持管理とリハビリテーション


Q182
浄水場のリハビリテーションプロジェクトにおいて、完了後どのように維持管理し、それを保守する方法を説明してください





  Key words:浄水場、リハビリテーション、保守・点検、維持管理マニュアル

1.開発途上国の浄水場の維持管理に必要な項目
 リハビリテーションプロジェクトが完了し、浄水場の運転・維持管理を引き継いだ事業体が日常実務として実行しなくてはならない維持管理および保守・点検の項目および実施体制について以下に示します。
(1)維持管理目標(ゴール)の設定
 浄水処理施設を運転し維持管理を実行するには、前提となる必須目標として、維持管理目標(ゴール)を設定し、浄水場長をはじめ担当職員全員が共通 の動機・目的をもちワークチーム一体となり、目標達成をめざし日常実務を事故なくスムーズに実施することが大切です。維持管理目標は、全体目標および部門・スタッフ個別 目標からなり、それぞれ以下の計画を策定することが必要です。
 1)長期計画
 2)年間計画および予算計画
 3)週単位・月単位の予定計画
(2)日常作業
 日常作業に欠かせない記録としては、運転日報、保守・点検整備日報があります。また、運転マニュアルを作成し、日常作業はマニュアルにしたがい基本に忠実に行います〔運転マニュアルは、水処理機械・ポンプ・薬品注入設備・電気/計装設備・バルブ・水圧計などについては、サプライヤー(受注・納入者)が作成・掲出義務を負います〕。運転マニュアルの一部として、個々のサブシステムや設備の機能の相互関係を説明した維持管理マニュアルが作成され、運転・保守には常に参照されることが重要です。維持管理マニュアルは、全体システム統合マニュアルでもあり、協同作業機能を確立したものでなくてはなりません。また、これらのマニュアルは現地語で記述され運転・維持管理担当者のための運転指針・マニュアルとして機能するものでなくてはいけません。運転・維持管理実施にあたっては、従事・担当職員を十分に研修し実務訓練を受けさせる必要があります。さらに、定期的に教育・研修を履行し、基本を忘れないことが大切です。

2.維持管理マニュアル
 維持管理マニュアルの参考例として必要項目の目次を以下に示します。
〈O&Mマニュアル目次例〉
(1)概略(マニュアルの使い方の説明)。
(2)システム記述(サブシステムおよび全体システムの関連を具体的・詳細に説明)。
(3)システム運転(運転チェックリストを引用してサブシステムの運転、総合システム運転の説明)。
(4)故障・運転不良(想定される故障および運転不良を例題にあげ、対処方法を説明)。
(5)注油・管理・整備(チェックリストを用いて注油が必要な場所と時期について説明)。
(6)修理・修繕(@メーターやポンプなど定期的に修理または取り替えが必要な項目についてその修理・修繕方法を詳細に説明、Aモーターやタンクなど定期的な修繕対象項目でない場合、その修理法はどこで情報が得られるか、また誰に接触すればよいかを記述)。
(7)付録(マニュアルの各項目・内容では説明されていない重要な維持管理に関する情報を添付)。
 1)安全管理ガイドライン
 2)参考文献・報告類
 3)作業記録のサンプル
 4)資機材納入業者リスト
 5)薬品の種類・内容説明
 6)参考書類
 技術的情報をやさしい記述で示します。内容はダイヤグラム・図表・写真などを用いわかりやすく説明することが重要です。

3.リハビリテーション完了後の引き渡し方法
 引き渡し方法としては以下の3種類がありますが、効果的リハビリテーションプロジェクトを実施するには(2)の方法が最も確実とされます。
(1)ON−OFF操作のみを指導し担当業者は引き上げるケース。
(2)実施プロジェクトに技術者の派遣を含め、数カ月の技術移転・訓練期間を取り入れるケース。
(3)別途専門家派遣など別枠対応のケース。
 上記対応例について、わが国の無償資金協力プロジェクトでは工事施工監理項目に試運転・運転管理訓練を含め、必要な期間リハビリテーション完了施設の運転を指導・訓練する必要があります。
 また、詳細設計の段階では当該施設の運転・維持管理が事業体および運転・管理担当者に対し対応可能であることを確認したうえで施設設計を実効することが大切です。

【参考文献】
1)AWWA:Basic Management Principles for Small Water System, Denber, p44―123, 1982.
2)ASCE:Water Supply System Rehabilitation, p111―163, 1987.
3)日本水道協会:水道維持管理指針,1982.
4)水道技術研究センター:水道管路情報管理マニュアル,1993.
5)国際厚生事業団:水道・廃棄物処理適正技術マニュアル:大・中規模水道編,1989.

(佐々木照治)

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