5.11 漏水防止作業と不明水


Q216
有効水量の増加と漏水防止対策の経済性について説明してください





  Key words:有効水量、漏水防止対策、経年管の敷設替え、復元量

 わが国の上水道における有効水量は、全給水量の90.9%〔水道統計要覧(1996年度)〕ですが、水資源の有効利用の面 より漏水防止対策は重要な課題となっています。
 しかし、漏水防止には多額の費用が伴うことから、水道事業経営上、漏水防止対策の経済性を無視することができない状況にあります。そこで、有効水量 と漏水防止の経済性について各種対策での効果を比較してみます。

1.有効水量(有効率)と漏水防止対策費
 有効水量と漏水防止対策費の関係は、一般的に大きな水道事業体ほど対策費用の額は大きくなります。
 厚生省環境衛生局水道環境部が昭和56年3月に行った費用効果分析調査報告書によれば、有効率と漏水防止対策費との関係にあまり相関があるとはいいがたく、莫大な費用を漏水防止対策に投資しても、経済性の面 からみると効果はあまりないとの結果が出ています。
有効率と配水管敷設年次
 一般的に、敷設年次の古い配水管ほど漏水する率が高いといえます。このため各水道事業体では、給水区域の拡張や配水管整備などとあわせて経年管の取り替えに積極的に取り組んでいます。このような観点から配水管の敷設年次と有効率をいうとわが国は1965年度を境として、配水管の使用管種がダクタイル鋳鉄管や塩化ビニル管の普及などにより材質強化による効果 が現れはじめました。さらに、水道の普及率が高まるなかで有効率が向上しはじめたことから、全配水管に占める割合に対する有効率の動向を分析してみました。
結果は表1に示しましたが、全体的にみれば、古い管の割合が小さくなることにより、有効率は上昇する傾向が顕著でした。このことは経年管の敷設替えが漏水防止対策として有効であるといえます。

2.漏水防止効果と評価
 漏水防止効果の指標として、復元量*を見込んだ単位配水管延長あたりの実質漏水防止水量 を用いて、費用、漏水防止対策との関連を評価すると、積極的に投資を行い、対症療法的対策と予防的対策に対してまんべんなく取り組んでいる事業体では、それ相応の有効率向上の効果 が認められました。また、同程度の投資を行った場合には、漏水量が相対的に多い事業体ほど、漏水防止の成果 も上がる傾向にあることが確認されています。このことは、予防的対策に要する費用は経年的効果 を期待できるものであることから、対症療法的対策費に比べて漏水防止コストとしては相対的に小さくなるものと考えられます。したがって、対症療法的対策による効果 が伸び悩んだ段階では、漏水防止は予防的対策に重点を移していくべきです。また、漏水防止対策費は、新規水資源開発費との比較を行った場合、およそ同程度のコストと推定され、付帯する他の効用をも考慮できることから、漏水防止対策は各事業体の現状有効率や、水資源開発の難易などの条件により差異はあるものの、経済性において劣るものではないといえます。

*復元量:漏水を発見して修理を行っても、時間の経過とともにまた新たな漏水が発生する。これと残存漏水量 の差(増加量)を復元量という。

【参考文献】
1)漏水防止の費用効果分析調査報告書,厚生省環境衛生局水道環境部,昭和56年3月.
2)全国漏水調査協会編:実務者のための漏水調査,水道技術研究センター,1995.

(久保田照文)

表1

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