3.1 水に伴う伝染病


Q66
水道の普及とトイレの改善による各種疾患の罹患率減少の可能性について説明してください





  Key words:水道の普及、トイレの改善、水系疾患、し尿の衛生処分

 水に関する感染症の大部分は、動物またはヒトの糞便に由来するバクテリアやウイルスや寄生虫などの病原生物により引き起こされます。これらの病原生物は水や食物とともに、あるいは手や指を通 して経口的に体内に摂取され、腸管内で増殖すると再び糞便とともに体外に排出され、関連する水域を汚染するので、適切な衛生的な措置が講じられなけば多くの人々を感染の危険に曝すことになります。この衛生的に適切な措置が水道の普及やトイレの改善を指していることはいうまでもありません。しかし、世界の人口(1994年で約56億人)の約29億人以上が安全な飲料水や衛生施設のない状態に置かれています。
 WHOは水道の普及とトイレの改善によって、水に関する疾患の罹患率は大幅に減少することを表11)のように示しています。特にコレラ、チフスなどの水系疾患には著しい効果 があります。図1は水道普及率とわが国の消化器系伝染病死亡率の推移を示したものです2)。戦後の水道の急速な普及とともに死亡率が急速に減少して現在ではほとんど抑止されていることがよく示されています。この水道の普及とトイレの改善の効果 については、小林が『水道・環境衛生分野での国際交流のすすめ』3)のなかで詳しくレビューしています。一方、し尿の衛生処分(トイレの改善;図24)、35))によっても水系疾患の罹患率は著しく低下することが明らかになっています。

【出 典】
1)北脇秀敏,関沢純,内田康策(監訳):WHO環境保健委員会報告:われらが地球 われらが健康,環境産業新聞社,p173,1993.
2)丹保憲仁:上水道.土木学会編,新体系土木工学88,技報堂出版,1983.
3)小林康彦:水道・環境衛生分野での国際協力のすすめ,日本環境衛生センター,p159―164,1995.
4)JICAグループトレイニングコース教科書:Solid Waste Management and Night Soil Treatment U (I):Environmental Sanitation and Public Health, JICA, p10, 1992.
5)Decade Commencement Report, WHO/EARO, 1982.

(井上 雄三)

表1

図1,2

図3

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