3.1 水に伴う伝染病


Q68
水に関する感染症の推定罹患患率、死亡率、危険対象人口について説明してください





  Key words:水系伝染病、推定罹患率、死亡率、危険対象人口

1.水に関する感染症
 水に関する感染症の大部分は伝染病です。その病因は生物学的なもので、動物またはヒトの糞便に由来して、バクテリア、ウイルス、原生動物あるいは寄生虫が、水や食物とともに摂取されるか、あるいは手や指を通 して経口的に体内に摂取さ・れます。体内に摂取されたこれらの病原性生物の多くは、腸管内で増殖し、再び糞便とともに体外に排出されるので、適切な衛生的措置が講じられなければ、関連する水域を汚染し、多くの人々を感染の危険に曝すことになります。
 これらの水系疾患は、次の5種類に分類されています。
(1)コレラやチフスなどが典型的な疾患で、
 病原体(ウイルスやバクテリア)に感染したヒトまたは動物の糞尿による水系汚染によって起こり、衛生的な水道施設や環境衛生施設がない場合に水を摂取することによってもたらされる水系伝染病(water diseases)。
(2)極度の水不足や取得が困難な場合にもたらされる(ある種の下痢や伝染性の皮膚病あるいは眼病)水洗によって防除可能な伝染病(water-washed dseases)。
(3)水中に生息する生物を中間宿主とする寄生虫によってもたらされる(住血虫症、ジストマ、ギニアウォームなど)水棲生物に起因する疾病(water-based diseases)。
(4)水辺を繁殖場とする昆虫によってもたらされる(蚊によるマラリアやフィラリア、デング熱、黄熱病、日本脳炎、蝿による河川盲目症、眠り病など)水域開運疾病(water-related diseases)。
(5)先進諸国にみられるもので、たとえば大型空調設備の水槽中で増殖、水分の霧散を通 して感染する(在郷軍人病)水により拡散する感染症(water-dispersed diseases)。

2.水に関する感染症の世界統計
 水に関する感染症は、水道施設や下水道などの環境衛生設備の整っていない、あるいは衛生的な考え方が普及していない途上国に集中しています。特により貧しい国、そしてより貧しい都市や地方の町や村に多くみられます。推定罹患率、死亡率、危険対象人口は、このような衛生環境のよくない状態によって引き起こされる健康リスクを表す指標であり、表1に示すような世界統計が出されています。

参考文献1

1)The Wor1d Health Report 1995:Bridging the Gaps: Report of the Director-Genera1, WHO, Geneva, P18. 1995.
2)北脇秀敏,関沢純,内田康策(監訳):WHO環境保健委員会報告:われらが地球われらが健康,環境産業新聞社,p173,1993.

(井上 雄三)


表1

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