1.2 水道整備に関連する援助機関とNGO


Q10
水道分野の援助における世界保健機関(WHO)の役割と特徴を説明してください





  Key words:WHO

1.WHOの概要
 WHO(World Health Organization)は、水系伝染病をはじめ、健康の観点からの水の問題について、最も知識経験を有する組織です。
 本部はジュネーブにあり(1996年1月現在事務局長は中嶋宏氏)、地域事務局が、西太平洋地域(WPRO;マニラ)、アメリカ地域(PAHO;ワシントン)、東南アジア地域(SEARO;ニューデリー)、ヨーロッパ地域(EURO;コペンハーゲン)、東地中海地域(EMRO;アレキサンドリア)、アフリカ地域(AFRO;プラザビル)の6つあります。
 水道分野にかかわりが深いのは環境保健部(Division of Environmental Health)で、部長直轄のユニットのほか、「国連飲料水供給と衛生の10カ年計画」に際して設けられた世界上下水道協力会(CCW)事務局、上下水道課(CWS)、環境汚染防止課(PEP)、都市・村落発展および住居関連環境保健対策室(RUD)から成り立っています(1993年11月現在)。また、化学物質安全対策部(PCS)は、世界的な化学物質安全対策推進計画(International Programme on Chemical Safety:IPCS)の事務局、中毒の予防と治療をはじめ人の健康にかかわる化学物質について評価を行い、モノグラフなどをまとめる業務を行っています。
 特に、飲料水水質ガイドライン(vol. 1〜3)は、多くの国の水質基準策定に貢献しています1)。

2.WHOの環境衛生へのアプローチ2)
 国連飲料水供給と衛生の10カ年計画のために作成したアプローチ(decade approach)は、今日もセクターのガイドラインの一つとなっています。これは、
(1)水道と衛生(sanitation)は補完的であり、保健教育により補足されなければならない。
(2)サービスのない都市と地方の住民にプライオリティが与えられなければならない。
(3)プログラムは、自立的、持続的な活動のモデルであるべきである。
(4)参加。
(5)水道、衛生、他のセクターの調整。
(6)水道・衛生と他の保健改善との協調。
 また、1992年の国連環境開発会議後、WHOの環境プログラムの焦点は、@環境汚染とその健康への影響、A開発、環境、健康のかかわりあい、に向けられています。

3.WHOの環境衛生分野のプログラムプロジェクト開発からの教訓3)
(1)挑 戦
 1)農村(rural)と半都市(semi−urban)部でよりインパクトを与える。
 2)よりコストが低く、維持管理が容易な技術を用いる。
 3)利用可能な資源を効率的に利用する。
(2)推薦されるアプローチ
 1)財政効率だけよりも効果を計画する。
 2)技術の選択を、明確なプロジェクト要素、かつ形成・承認手続きの一部とする。
 3)ソフトウェア要素、すなわち、組織制度強化、人的資源開発、受益者参加を強化する。少なくとも資本投資の5%をソフトウェア要素に配分する。
 4)建設後のある年数の間、開発援助に運転管理支援を含める。
 5)プログラムプロジェクトを、都市計画、農業活動、水資源、環境と関係づける。
 6)保健、財政、経済に関する効果のモニタリングと評価を組み込む。
(3)持続性への示唆(implication)
 1)技術基準よりも参加的アプローチとして計画する。
 2)コミュニティの構造を運転管理のために持続的にする。これは、現地の管理構造、受益者の参加とモニタリングを必要とする。
 3)人々のニーズと責任における、プロジェクトプログラムとその位置と役割に支援を得るため、受益者の理解を深める。
 4)財政計画の一部として、費用回収を含む財政的実行可能性を確保する。

4.環境衛生分野の活動4)
(1)援助機関が開発途上国で行う援助プロジェクトのデータベースを作成しており、当初はCESI(Country External Support Information)として、水供給・衛生セクターのデータのみを扱っていましたが、その後化学物質安全性、食品安全、健康サービス、放射線、大気、都市化などに関するデータも取り扱うようになり、1993年2月より、EHMDAC(Environmental Health Information for Management of Development Activities)としてリリースされています5)。
(2)国レベルの能力形成(capacity building)に特に注意を向けており、イニシアティブとして、WHO/UNICEFジョイント水道衛生モニタリングプログラムを行っています。
(3)水道衛生に関する衛生教育を重視し、トレーニング教材・マニュアルの開発を行っています。
(4)disease vector controlのための水資源管理の検討を行っています。
(5)Water Supply and Sanitation Collaborative Councilにおける、事務局活動と運転管理ワーキンググループの主催を行っています。
(6)都市環境問題について、Healthy City Projectを実施しています。

【出 典】
1)国際環境計画通信 newsletter No. 4,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Dec. 1993.
2)Preparation of a Manual for the Formulation of Master Plans for the Environmental Sanitation Sector in Developing Countries, assembled by Dieterich BH, JICA, Tokyo, 1994.
3)Dieterich BH(元WHO環境保健部長)のJICAにおけるスピーチより,1994.
4)The Work of WHO 1992―1993 Biennial Report of the Director―General to the World Health Assembly and to the United Nations, WHO, Geneva, 1994.
5)国際環境計画通信 newsletter No. 1,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Dec. 1992.

(渡辺 泰介)

 

戻る    次へ

コメント・お問合せ