4.2 水道料金制度


Q100
水道料金制度が妥当でない場合の、問題解決の方法を示してください





  Key words:水道料金制度、料金体系、資本収支、料金改定

1.何に対して妥当でないかにより異なる解決法
 水道料金制度の妥当性のチェックポイントは、水道料金制度に問題がある場合には、取り除くべき原因のチェックポイントでもあり、そのまま問題解決の方法を示すものとなります。ここでは、チェックリストふうに整理してみましょう。
(1)必要なサービスが提供されていない場合
 1)安全な水実現の長期戦略と計画を策定する。
 2)有収率向上の長期戦略と計画を策定する。
 3)普及率拡大の長期戦略と計画を策定する。
 4)1)〜3)を有機的に実現する資本調達、償還、収入の長期戦略と計画を策定する。
(2)将来のサービスが保証できない場合
 1)長期的な需要の増加や他企業との競合、その構造を想定する。
 2)施設拡張の長期戦略と計画を策定する。
 3)有収率と水質の維持向上の長期戦略と計画を策定する。
 4)拡張、維持事業の資本調達、償還、収入の長期戦略と計画を策定する。

2.避けて通れないコストをまかなうための料金体系
(1)供給対象に対する区分が適当でない場合
 1)用途による区分の要否とその分類を精査する。
 2)需要量による区分の要否とその分類を精査する。
 3)用途、需要量以外の区分の要否を精査する。
 4)特定サービス目的の取り扱いを整理する。
(2)中長期の見通しを誤っている場合
 1)長期見通しと計画に対するコストを見直す。
 2)中期見通しと計画に対するコストを見直す。
 3)各年度へのコストの配分を見直す。
 4)配分コストの回収料金への配分を見直す。

3.建設、拡張、維持、運転の収支と資本収支
(1)建設、拡張費用のコスト配分が誤っている場合
 1)従量料金の体系と配分単価を検討する。
 2)負担金、分担金、加入金の適用を検討する。
 3)装置基本料金の体系と配分単価を検討する。
 4)その他の料金制度もしくは組み合わせを検討する。
(2)維持、運転費用のコスト配分が誤っている場合
 1)装置基本料金の体系と配分単価を検討する。
 2)従量料金の体系と配分単価を検討する。
 3)特定サービス料金の適用を検討する。
 4)その他の料金制度もしくは組み合わせを検討する。

4.料金改定

 以上のようなチェックの結果に基づいて、必要な事業を推進し経営の効率化を図ったうえで経費が不足すれば、その内容によって、政府などからの補助を求めるか、料金の水準や体系を改訂して不足を補う必要があります。
 料金の改定にあたって、負担能力の心配があれば、供給する対象、飲用、衛生、生活向上の需要の段階(供給する質の違いではないので注意すること)に対応させて、体系や水準を適正にする工夫に、細心の注意をはらってください。
 なぜなら、一般市民の飲用に必要な施設規模に対応する料金水準は、経済の発展段階に対応しつつ、生活費のなかで相応な割合に収まるはずだからです。むしろ、追加コストが必要な大口需要家を逃さない対策が必要かもしれませんし、産業育成など政策面 を考えるのであれば、政府などによる補助の対象とすることになるでしょう。
 ここで注意しなければならないのは、負担能力が心配だからといって、必要な料金改定をしなかったり、極端な低料金政策をとるという考え方に陥ることです。Q102で説明しますが、このような考え方は結果 として経営を破綻させ、供給能力の低下から、低所得者への低廉な水の供給を不可能にしてしまう危険が大きいのです。本当に水道が必要な低所得者に水道による水の供給を続けるためには、適正な料金による健全な経営が、ぜひとも必要であるということを理解してもらう必要があります。

(野津 博道)

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