4.2 水道料金制度


Q102
住民の多くが貧しいため、水道料金をただ同然に安くし、財政的に破綻している水道事業にはどう対処すべきですか





  Key words:水道料金制度、財政破綻、経営再建、自力経営

1.経営の再建
 この質問は、質問自体がすなわち答えになっています。財政的に破綻するということは、事業経営が成り立っていないのですから、
(1)金融機関に差し押さえられる
(2)地方政府で肩代わりして、税収でまかなう
(3)自ら経営を建て直す
のいずれかになります。
 水道の供給を止められないのであれば(1)は避けなければなりませんから、(2)か(3)になりますが、(2)の場合も、そのまま税負担にできる場合は別 として、通常はプロセスが違うだけで結局(3)が必要になります。
 そもそも、遡って、住民の多くが貧しいからといって、水道料金をただ同然に安くしてよいのでしょうか。この考え方自体大きな問題がありますが、このままでは経営を建て直すことはできません。破綻した経営を建て直すためには、一時的にせよ、結果 として高い料金負担が必要になりますし、そうしなければ水道の供給ができなくなります。

2.多様なかたちが可能な水道の経営施策
 では、水道の経営を建て直すには、どうしたらよいのでしょうか。水道料金制度の妥当性のチェックポイント(Q99)および同制度が妥当でない場合の問題解決の方法(Q100)で紹介したところに帰しますので、これを参考にしてください。
 ただし、誤解を避けるために付言しますと、水道の経営施策は、その対象をどうとらえていくかによって多様なかたちが可能です。住民の多くが貧しいということは、当然、共同の水道が多いはずですし、これに合った給水装置を工夫し、配水ネットワークを工夫して供給コストを抑制すれば、他の需要者に対するよりも料金は安くなるはずです。
 そして、単独で受水する者、多量に使用する者には、それぞれに対応したコストになりますから、それに見合う合理的な料金を徴収していく対策を講じていけば、経営は再建できるはずです。

3.自力経営を実現するために
 経済発展に伴い、負担能力が高くなれば共同水道は減少し、水道需要は増大します。事業者としては、こうした社会経済の動向を見通 して、配水ネットワークと供給能力を整備する必要がありますが、見通しに大きな誤りがなければ、合理的なコスト負担を貫いている限り、自ずから増収していきます。
 すなわち、適正な施設整備と経営管理により、経営は健全化できるということです。このような健全化に向けた計画と、その着実な実施を前提として、つまり、自力経営の実現を前提として、そのための資金を確保しなければなりません。
 過去の負債の償還に加えて、新たな資金需要も少なからず予想されますから容易ではありませんし、厳しい内部努力が求められ、また、ある程度は税収による支援も必要になるかもしれません。
 料金政策の間違いがこのような苦しみをもたらすわけです。少なくとも、長期的にみれば使用者間の公平を確保できないわけですが、再建により今後の公平が実現できるのです。事業者は自らの見通 しに自信をもち、強い決意で困難に耐えていく必要があります。

(野津 博道)

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