4.2 水道料金制度


Q105
水道料金の家計支出に占める割合の限度はどの程度ですか





  Key words:水道料金、消費生活習慣、料金受忍限度

1.公式にできない負担能力と割合の限度
 水は生活に欠くことのできないものですから、仮に水道が唯一の供給源であれば、衣食住のすべてに優先して確保するための負担を厭わないでしょう。しかし、実は2つの面 でそうならないのです。一つは、水といっても、その用途は多様だということ、もう一つは、生活のリズムや供給源の多様さが国や地域によって異なるということです。
 また、これらは、経済発展や生活スタイルの変化によっても変わります。その時、その場所、その人たちによって、負担能力と割合の限度は変わると考える必要があります。

2.消費生活習慣と水使用にかかわる生活スタイルによる料金受忍限度
 たとえば、赤道に近い国では、飲用を除き湯を使わない場合が少なくありません。大都市を除けば、浴用や洗濯は、貯留雨水、河川沼水、井戸水など、その場所に適した方法でよいわけですから、一般 のイメージにある水道の必要性さえ疑われるわけです。
 途上国の多くは、形は違っていても、そのような状況のもとで、公衆衛生の向上と生活環境の改善という使命を達成するために、どのように水道を普及させていくかについての戦略を必要としているわけです。
 国をはじめ、公表されているデータの信頼性も考えなければなりませんが、仮に、何らかの方法で、限度となる家計支出に占める割合を判断しても、それは、ある水道の状態を前提にしているわけですから、確かな戦略のもとに需要家とその信頼、選好を獲得すれば、この割合は向上させられるわけです。
 また、水道事業を含む各種事業の経済成長への貢献、関連業者の育成など、間接要因もあります。
 さらに、これらによる負担可能額の上昇も想定できるわけですから、一般的な料金受認限度を答えることは、きわめて難しいとお答えしたいと思います。

3.競合する水供給や基盤産業の存在
 そもそも、経済発展に成功して生活水準が向上した先進国の到達水準で、同じようなスタイルの水道を一気に途上国に持ち込むことには無理があります。
 先進諸国が経てきた経過と試行錯誤を参考にしながら、途上国のその時点のレベルを見きわめつつ未来志向の水道整備をしていくことが大切です。
 つまり、水道料金の家計支出に占める割合の限度を考えるよりも、現在および近い将来そして長期的な使用用途や形態に基づく需要予測、それに対応する施設を軸にした計画的整備、そのための財政および料金計画の分析検討を進めるほうが、実戦的で実効が上がることでしょう。公衆衛生の向上、生活環境の改善という使命をふまえてみても、競合する水供給手段、電力、通 信、交通など他の基盤産業との比較も重要ですが、家計支出に対するシェアに目を奪われて、結果 として、この大切な使命を実現できないことになっては何にもなりません。
(野津 博道)

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