4.2 水道料金制度


Q106
水売りの値段は水道料金の何倍程度であり、どんな問題がありますか





  Key words:水売り、水道料金、水道の普及

1.難しい公式データの入手
 この質問には、残念ながら正面からお答えすることができません。もし、どちらかに赴任する場合は、その任地で調べてみてください。無責任な答えと思われるかもしれませんが、責任をもつためには、こうお答えするしかないのです。
 政府などによる公式のデータは、その信頼性をよく確かめることが必要でしょう。また、自ら調べる場合も含め、それがすべてだとは思い込まないことが肝心です。
 文献などに紹介されている場合は、かなり調査に苦労され信頼してよいものと思われますが、表1以外に心当たりがありませんので、貴重な資料として参考にしてください。

2.水道料金の安定性と需給バランスのうえに成り立つ水売りの値段
 なぜ、信頼できるデータの入手が困難なのでしょうか。それは、小規模な小売りについては、正確なデータがとりにくいからです(ここでは、国営など公的機関によるものは考えていません)。たとえば、その日の天候などによる売れ具合によっても、値段は変わる性格のものです。
 ちなみに、1995年のジャカルタでは、1.1円未満から40円くらいまで変動しているようですし、1984年のタイ東北部では20.10〜30円くらいであったようです(1993年には2.5倍ほど高いのですが円高で円換算では同額のようです)。また、ボトルウォーターは、市場価格として若干の違いや変動があります。
 これに対し水道料金は、公的機関の経営によることが多いこともあって、安定性をもっています。しかし、水売りとの連動性はまったくないので、比較は難しいわけです。
 このように、水売りは需給バランスのうえに成り立っていますし、価格を規制できるものでもありません。しかし、公衆衛生のうえでは好ましくない面 が多々あります。そもそも、こういうものをなくすために水道の普及を図っているわけですから、水道事業者としては、水売りが並存している状態は早期に解消するよう努めていくべきでしょう。

3.都市環境と水道整備、所得水準そして生活スタイル
 途上国であっても、水道のある暮らしを体験した人は誰でも、水売りが必要な生活を望まないでしょう。もし水道が普及していなければ、一日も早く利用できるようになることを望むはずです。
 水の使用量がそれほど多くなくとも、水売りしか利用できない状態では、貧しい階層にとって経済的負担が大きいうえに水質が悪いのですから、このような状態がよい理由はありません。水道の普及は、よい水質で、使える量 が増えて、なおかつ経済的負担が相対的に小さいのですから、地域の実情に合わせた水道の整備が何よりも急がれなければなりません。
 公衆衛生の向上と生活環境の改善に、水道は大きく寄与します。言葉を換えれば、水道は、健康で文化的な生活を支える施設の典型であり、水売りや井戸への依存は都市基盤の整備が遅れている象徴でもあります。
 ボトルウォーターは異質ですが、国民所得の向上に比例して、水道事業者が整備を怠らない限り、水売りは消えていくことでしょう。

【出 典】
1)Bhatia R, Falkenmark M.Water Resources Policies and the Urban Poor.Innovative Approaches and Policy Imperatives:Water and Sanitation Currents, UNDP―WORLD BANK Water and Sanitation Program, Washington DC, 1993.
【参考文献】
1)Garn H:World Bank“Pricing and Demand Management:Regional Consultation, Managing Water Resources to Meet Megacity Needs”, Washington DC, p359.

(野津 博道)

表1

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