4.2 水道料金制度


Q108
途上国における水道料金の徴収方法の具体例と、その長所・短所を説明してください





  Key words:水道料金、計量、調定、徴収

1.日常生活や商業の慣習に左右される徴収方法
 水道料金の徴収方法に、途上国か先進国かでの違いがあると考えるのは誤解を生みます。もちろん、徴収業務で補助的な役割を果 たす郵便や通信など他の基盤的事業の、制度的あるいは技術的な成熟の度合いは途上国のほうが低いでしょう。
 しかし、金融機関への信頼度も含め、国や時には地域社会による日常生活や商業の慣習の違いのほうが、徴収方法の選択、補助的な他事業の利用に大きく影響します。

2.計量および調定の適正と徴収の適正
 徴収業務で重要なことは、計量、調定および徴収が適正で公平に行われることです。極端な表現をすれば、適正かつ公平で使用者に受け入れられれば、どのような方法でも、見込みどおりの有収率と徴収率は確保できるのです。
 計量は、事業体の職員が検針して行う場合が一般的でしょう。インドネシアの一部のように検針の機械化を図っている例もあり、先進国と変わるところはありません。この業務のみを受託する民間企業は、途上国ではまだ無理があると想像されます。委託先があるとしても地域の共同体なり個人なりでしょう。
 調定は、コンピューターの普及具合にもよりますが、タイやインドネシアでは、利用している事業体が大部分です。もっとも、程度はさまざまで、領収証発行や収入確認までOA化しているところもあれば、計算のみというところもあります。
 徴収は、他事業に対する信頼や利用習慣によって大きく左右されます。タイでは、郵送による請求や銀行での払込みなど、日本とあまり違わない方法が行われています。しかし、インドネシアでは、使用者が直接水道公社かその代理店に赴いて直接払い込んでおり、郵送は見かけませんし、銀行利用は例外的です。

3.困難な効果・効率の評価や長所・短所の判定
 どのような徴収方法が効果的あるいは効率的であるか、その長所と短所はどのようなものかを判定することは容易ではありません。途上国に限らず、その国や地方の現状に照らしてみないと判断できないからです。
 たとえば、コンピューター通信技術の利用は、人件費が安い事情などを考えると経費的にはむだともみられがちですが、仕事の質の面 では有益ともみられています。
 また、請求書の郵送は郵便に対する信頼が前提になり、銀行での払込みは市民に銀行を利用する習慣があるかどうかによります。集金は、やはり人に対して信頼ができるかどうかにかかります。
 このように、その国や地方の事情により長所と短所が入れ替わってしまいますので、それぞれの事業体が、なぜその方法を採用しているのかを調べる必要があるのです。そのうえで、他の方法のほうが望ましいか否か、実施できるのか否かを検討すべきでしょう。           

(野津 博道)

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