4.3 水道事業の民営化と民活化


Q109
水道事業の民営化・民活化の国際的動向を説明してください





  Key words:民営化、民活化、BOT、コンセッション、民間委託、コンソーシアム

 水道は、国民生活、産業社会のインフラストラクチャー(以下、インフラ)として、基本的に地方自治体などの公的団体がその建設、運営を行ってきました。しかしながら最近では、いろいろな事情から民間セクターが関与することが、先進国、途上国を問わず多くなってきています。

1.途上国における動向
 まず、途上国では、インフラ整備資金の不足から、BOT(build―own―transfer)といわれる、完成後の経営権の取得と引き換えに資金調達を民間に依存する方式が盛んになっています。この方式は、民活化による経営の効率化と援助そのものの効率化をねらって、世界の援助機関が途上国に推奨していることも大きな要因です。各援助機関は、民間セクターが援助プロジェクトに参入しやすいように、プロジェクトリスク軽減のために、政府や地方自治体のプロジェクトと援助を組み合わせたプロジェクトを開発したり、あるいは途上国民活支援のための投資会社設立の支援をしたりしています。

2.先進国における動向
 先進国では、公的セクターによる水道経営の非効率性の問題から、民営化、民活化が進められてきました。フランス、スペインなどでは、インフラ整備における民活導入がすでに17世紀ころから盛んに行われていたという歴史もあり、水道でも、19世紀ころから「コンセッション」とか「アファーマージ」といわれる契約形態で、一括請負的な民間委託が行われていました。現在もこの伝統が続いており、多くの水道会社がパリ市をはじめとする多くの都市の水道の経営を請け負っています。
 しかし、世界的な水道民営化議論に火をつけたのは、イギリスで1989年に行われた民営化です。当時全国で、水道を含む水の総合管理を行っていた全国10のウォーターオーソリティをすべて株式会社化するという抜本的なものでした。また、整備資金の不足という問題は、低成長経済下の先進国にもしだいに広がっており、これまで主に公的セクターが実施していた計画、設計分野についても民間に委託し、工事、あるいは場合によっては、資金調達も含めて、一括発注する方式が行われるようになっています。
 民活導入にあたっては、その民間セクターを公的セクターがどう管理して、住民利益を保全するかということが大きな課題となります。このためには、料金規制を実施したり、競争を確保するため契約の更新権を留保したり、地域分割による複数事業者の参加を促したりするのが一般 的ですが、この種の規制に十分な効果が期待できない場合には、委託の範囲を狭めて、資金調達はやはり公的セクターで行うとか、料金徴収は除くとか、いろいろなバリエーションが誕生しています。
 世界の水道の民活化に大きく寄与しているのが、民活水道の歴史をもつ英仏の水道会社です。これらの会社は、自国でのノウハウをもとに、現地の水道関連会社や金融会社とコンソーシアムを組んで、先進国、途上国を問わず、世界で積極的に活動しています。
 一方、日本でも業務委託のかたちで民活導入が活発に行われていますが、この場合、委託される業務がそれぞれ小さく分割されており、受託者側に大きな責任を負わせるかたちにはなっていないのが特徴です。これは、日本の水道法における公営優先主義の考え方からやむをえないことですが、拡張事業に要する資金調達システムが国の完全な管理下に置かれていることとあいまって、日本では、水道分野における本格的な民活導入はいまだなされていないというべき状況でしょう。

(斉藤 博康)

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