4.3 水道事業の民営化と民活化


Q110
イギリスの水道事業の民営化について概要を説明してください





  Key words:イギリスの水道事業の民営化、プライスキャップ

〈イギリスにおける民営化の歩み〉
 イギリスでは1989年、サッチャー政権下、当時10のウォーターオーソリティの上下水道経営部門と29の水道会社が完全民営化されました。この39の水道会社は、現在では水道会社の合併もあり、数はいくらか減り、フランスの水道会社やイギリスの水道会社が互いに資本参加する関係になっています。
 この民営化にあたっては、水道法(1989年)、水道事業法(1991年)、水資源法(1991年)が次々に整備され、水道事業者の営業の許認可に伴い、施設の所有権、地域的な営業規制、水道料金の設定規制、会計処理手続きのための諸規定がつくられました。一方、通 信、電力、ガスなどの公共サービスなどと同様に、水道事業の監視のために官署(Office of Water Service:OFWAT)が設置されました。このほか、従来からあった飲料水監督官(Drinking Water Inspector)は、引き続き水道の水質についての規制、監視を担当し、民営化前のウォーターオーソリティが河川委員会(National River Authority)に改組されて、流域の対策を担当することとなりました。
 完全民営化されたこれらの水道会社はすべて、プライスキャップと呼ばれる料金規制のもとに置かれることになりました。この規制は、料金の上限を設定し、その範囲内でもうかった分はもうけてもらって結構ですというもので、総括原価主義といわれるわれわれの水道の料金設定の考え方とは大きく異なるものです。
 具体的には、料金上昇率の上限は物価上昇率プラスKという式で表すこととし、各水道会社ごとに、1990〜2000年の一定のKの値が決められました。当初の考え方では、Kの値はマイナス、つまり、水道料金の上昇率は物価上昇率よりは小さくなければ民営化の意味がないということだったようですが、当時のECの厳しい水質基準への適合対策の必要性という特殊事情が考慮され、すべての会社に対してプラスのK=5%という値が設定されました。5年経過後の1994年にはKの見直しが行われ、K=1.4%になり、需要家ベースでは、実質料金が引き下げられた需要家も出てきたとのことで、民営化は一応成果 を上げているということになりました。
(斉藤 博康)

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