4.3 水道事業の民営化と民活化


Q112
民営化・民活化、一部業務の民間委託について、それぞれの違いおよび長所・短所を説明してください





  Key words:民間委託、民営化、民活化、BOT

 この3つの用語は、いずれも原則、公的セクターが経営している水道事業について、民間が何らかのかたちで関与するパターンを分類しているものですが、必ずしも、統一的な視点から分類されておらず、それぞれ重複なく概念整理されたものではありません。

1.業務の民間委託とは
 一部業務の民間委託というのは、単純労働的な業務や高度に専門的な業務などを外部委託することで、アウトソーシングなどともいわれ、日本でも広く行われています。経営の主体はあくまでも公的セクターにあり、民間参加の度合いは他の2つに比べて非常に低い段階です。
 業務委託は、検針業務を歩合制にするとか、24時間のシフト労働を安価に行うとか、定員管理の枠にしばられずに業務を実施するなどがよくあるタイプですが、公的セクターのいろいろな規制にしばられない民間の力を借りることによって、効率化を図ることができるといわれています。一方、この委託が恒常化すると、委託側の職員が第一線の実務を長期に離れることとなり、しだいに自らの施設に責任がもてなくなってくるという弊害が出てくるといわれています。

2.民営化とは
 民営化は、基本的には、主に経営効率化を目的として、すでに管理運営状態にある水道事業の経営主体を、役所あるいはそれに準ずる経営体から民間の経営体に移すときに使われます。このほか、10年を超えるような比較的長期間にわたる運転委託契約のもとに受託した民間側も、ある程度のリスクを負って水道事業の経営を行う場合も、民営化されているというような表現をすることがあります。
 民営化の長所は、何といっても、運転コストの削減を通じて、水道料金の高騰防止、引き下げが可能になるということです。ただし、これには料金規制や経営監視施策などが別 途必要であり、運転会社を野放しにしておいては料金引き下げは実現しないといわれています。

3.民活化とは
 民活化という用語は、新規事業を起こしたり、拡張事業や大規模改良事業を新たに起こすときなどに、その財源を、公的資金ではなく民間資金に依存して実施しようとするときに使われます。この場合、工事完了後の運転も含めて民間側に任せることも多く、この場合は、一種の民営化水道が出現することになります。BOT(build−own−transfer)という入札形態、契約形態はこの典型です。
 また、民間資金に依存するいっても、途上国においては、世界の援助機関がこの契約形態に大きな関心をもっていることもあり、民間資金ではなく、援助機関からの資金が受託する民間側に融資される場合も多く、その意味では、民間資金に依存するというより、公的セクターが自ら資金を調達しないで事業を実施する手法と定義するほうがいいかもしれません。問題は、このような契約の入札に参加できる民間が、果 たして、世界のどこにでも複数存在して競争が確保できるかどうかであり、実際、落札者がしだいに特定の企業グループだけになりつつあるという声もあります。
(斉藤 博道)

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