1.2 水道整備に関連する援助機関とNGO


Q12
水道分野の援助における国連児童基金(UNICEF)の役割と特徴を説明してください





  Key words:国連児童基金(UNICEF)

1.UNICEFの概要
 UNICEF(United Nations Children’s Fund、 旧名はUnited Nations International Children’s Emergency Fund)は、児童のニーズを専門に担当する国連では唯一の機関です。第2次大戦直後の設立当初は戦禍地域の児童に対する緊急援助(教育機材の供与、教育者の育成など)を目的としましたが、現在は給水、衛生、予防接種、栄養改善、識字教育、母子保健など、途上国の児童の状況を改善するための中長期的援助に重点を置きつつ、自然災害、地域紛争の際の緊急援助を行っています。また、UNICEFは政府からの拠出のみならず、民間からの募金に基づき活動を行うという特色を有しています1)。

2.水と衛生分野の活動2)
 2000年の目標は、すべての人が安全な飲料水と衛生サービスを受けられるようにし、水で伝染するメジナ虫病(ドラクンクルス虫症)をなくすことです。
 1993年には、90以上の国でWATSAN(水と衛生)プロジェクトの支援が行われました。部門別 の事業支出では、1993年には、水と衛生部門で8400万ドルが支出され、他にも緊急救援援助としてWATSANの支援に4760万ドルを支出しています。この支出によって、安全な飲料水を供給し、衛生環境を改善することができただけでなく、各国の計画・政策立案能力を高め、伝統的な給水方法の費用対効果 や給水に費やされている時間やエネルギーについて調査し、この部門の活動をモニターし評価を行いました。1993年には、バングラデシュ、中国など26カ国でWATSANプログラムの再検討と評価を支援しました。
 WATSANプログラムの目標を達成するためには、UNICEFは、給水ポンプやパイプの供給などのサービスの提供を超えて、このプログラムが保健や社会経済にもたらす恩恵や、環境保護との関連を視野に入れなければなりません。この新しいアプローチの戦略を作成するために、1993年4月にニューヨークでワークショップが開かれました。
 また、WATSANプログラムによって保健と社会経済的な恩恵に対する関心を高めるための衛生教育の一連の国際的ガイドラインの作成を行っています。

3.水道、衛生分野の政策3)
 UNICEFの目標を達成するために、次の政策とプライオリティが示されています。
(1)プログラムの政策
 1)プライオリティのあるターゲットグル
  ープ
  @子供が主要な受益者であるが、必然的にすべての家庭とコミュニティにアプローチされなければならない。
  A農村と都市周辺部の貧しいコミュニティへのサービスが、特にプログラムに含まれなければならない。
  B自然災害、戦争などの緊急事態にあるコミュニティへも支援を行う。
  C政策決定者、地方行政官にも、問題と可能性を意識するよう注意をはらう。
 2)基本政策
 UNICEFは、利便性(アクセスの容易さ)、信頼性、適切性(コミュニティのニーズと状況に適していること)、支出可能であること、を強調するシステムの開発を促進する。
 プログラムは次の点をめざすべきである。
  @長期的な自己信頼性(国、地方、コミュニティレベルでの、能力と組織調整の開発)。
  A受益の最大化(限られた資源で最大数のプライオリティのあるターゲットグループがカバーされるような基準の適用)。
  B水資源の保全。
  C上記の内容を確保するために必要な要素として次の点があげられる。
   a.コミュニティの参加。
   b.女性の参加。
   c.情報、教育、コミュニケーション(意識開発、参加の促進、行動の変化のため)。
   d.組織・制度づくり。 
   e.最大のコミュニティ/利用者の責任。
   f.人的資源開発。
   g.適正技術(appropriate technology)。
 3)プログラム開発の原則
  @水道、保健教育、衛生の活動をプログラム全体で統合する。
  A既存、または予定されるprimary health care(PHC)および他のコミュニティ開発プログラムとリンクすること。
  B関係する機関と調整して計画されること。
  C現地の利用できる資源を含め、包括的な状況分析を基礎として計画されること。
  D責任(responsibility、accountability)を明確にしてプログラム、プロジェクトの管理が調整されるよう注意する。
 4)UNICEFの役割
 UNICEFの役割には4つの面がある。
  @主張(advocacy):ニーズ、適切な政策、プライオリティに関して。
  A促進(facilitating)と調整(coordinating):関係者の経験の交換を含む調整とプログラム準備の促進。
  B物的支援(material support)。
  C触媒(catalyst)。
 5)投入(inputs)
 UNICEFのプログラムへの貢献は、資材(supplies)、機材、運送、資金(funding)、スタッフ支援のかたちで行われる。
 プログラムコストのどれだけをUNICEFが支援するかは、固定したルールはない。
  @資材および機材:現地で調達できるものを含め、その国で容易に利用できるものに集中する。
  A資金(cash assistance):以下の項目に利用できる。
  a.プログラムに特定された調査、評価。
  b.セミナー、ワークショップ、研修(人材開発を含む)。
  c.ローカルコスト(政府予算が不足する場合の、たとえば、消耗品、給与補給、燃料)への貢献(contribution):初期投資コストで、リカレントコストではない。
  B直接のスタッフ支援(direct staff support):長期のプロジェクトスタッフ(その国、国外の専門家)が雇用される。また、地域アドバイザーおよび本部が、調整と政策課題について支援を行う。短期コンサルタントは、特定の専門能力が必要な場合に用いられる。
  C対象とならないもの:運転管理コスト、非常に深い井戸、大きなモーターポンプ、都市中心部の水道、大規模下水道、基礎研究、基礎的でアカデミックな研修。

【出 典】
1)外務省経済協力局編:我が国の政府開発援助(ODA白書 上巻),国際協力推進協会,p361,1995.
2)1994年ユニセフ年次報告,ユニセフ駐日代表事務所,p66―68,1994.
3)UNICEF Programme Guidelines, vol. 3:Water Supply, Sanitation, and Hygiene, UNICEF, New York, 1988.

(渡辺 泰介)

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