5.1 水道整備


Q131
水道分野の将来プロジェクトは、新規事業、拡張事業、既存施設のリハビリテーションの割合がどうなりますか





  Key words:新規事業、拡張事業、リハビリテーション

1.途上国における水道事業
 途上国においては、地方農村は水道が未整備のところが多いため新規事業の割合が高く、都市は水道がすでに整備されているところが多いため新規事業は少なく、代わって、リハビリテーション(以下、リハビリ)と拡張事業の必要性が高まっています。都市の水道施設は植民地時代からの継承や独立直後につくられた古い施設が多く、これら施設が適切に維持管理と更新がなされてこなかった結果 、著しく老朽化し、機能低下をきたしています。加えて、途上国の都市は、人口の急激な増加により、給水人口の増加や給水地域の拡大をもたらしています。

2.都市の水道のリハビリテーションと拡張
 都市の水道ではリハビリと拡張事業を同時に行う必要性が高いため、どちらが多くなるかを答えることは難しい問題です。基本的には両方同時に行うのが望ましいのですが、資金的な制約から同時に実施することが難しい国がほとんどです。また、援助機関は、リハビリは老朽管の更新のように時間と費用がかかる割りには、効果 が表に現れない地味な事業が多いため、あまり積極的ではなく、代わりに速効的で宣伝効果 の高い新設・拡張事業を好む傾向があります。しかし実際は、リハビリの効果 は大きく、経営を健全化し自助努力による経営を可能にさせます。途上国の水道事業経営を不健全なものにしている大きな理由の一つに、水道施設の老朽化と財政悪化の悪循環があります。施設の老朽化は有収水量 を減少させます。加えて、質・量的な不満をかかえる消費者の水道料金の不払いがさらに有収率を低下させます。その結果 、財政が悪化し、それは当然、拡張やリハビリ事業はもちろん、日常の維持管理さえも困難にさせます。これによりますます施設の老朽化が進むことになります。このようにして水道経営は悪化の一途をたどることになります。また施設の老朽化が著しい場合は、拡張事業が効果 を発揮しないことが多く、特に、配水管網の老朽化が著しい場合は、浄水能力の拡張は無効水量 を増やし、さらに水道事業経営を悪化させてしまいます。したがって、まずは施設の老朽化と経営悪化の悪循環を断ち切り、健全な事業経営を取り戻すことが重要です。これにはリハビリが大きな効果 を発揮します。リハビリは既存の水道施設を適正化させ、既存施設だけでも健全な経営を可能にさせます。いったん事業経営が健全化されると、自助努力により少しずつではありますが事業実施が可能となり、また海外からの援助や投資が増加するはずです。最近では、途上国および援助機関で、リハビリをもっと重視しようとの動きが起こっているようです。日本の水道援助の場合、このリハビリの一部は緊急改善事業として無償援助で実施されることが多く、大きな効果 を上げています。

【参考文献】
1)水道・廃棄物処理適正技術マニュアル:小規模水道編,国際厚生事業団,1988.

(芳賀 秀壽、佐藤 弘孝)

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