5.1 水道整備


Q134
日本国内と国際協力では、コンサルティングにどのような違いがありますか





  Key words:国際協力、コンサルティング、トータルコンサルティング、水道コンサルタント

1.日本国内と国際協力でのコンサルティング内容の違い
(1)コンサルタント契約
 コンサルタントはクライアントとの契約において倫理規定で拘束されており、コンサルタントは専門職であること、守秘義務があること、クライアントの利益を第一とすること、中立性を保つことなどが規定されています。コンサルタントは国内、途上国を問わず基本的には同じ倫理規定のもとで業務を遂行します。
(2)クライアント
 日本国内の業務ではクライアントは官公庁や企業ですが、国際協力においては国際協力事業団(JICA)、海外経済協力基金(OECF)などの日本国内の援助機関、世界銀行やアジア開発銀行などの国際援助機関、そして業務の実施国である途上国の現地官公庁や企業がクライアントとなります。JICAなどの日本の援助機関の業務の場合は、クライアントはその援助機関ですが、実際にコンサルティングを必要としているのは被援助国です。このような場合においてはコンサルタントは両者を満足させる必要があります。
(3)外国人との関係
 業務の場が開発途上国であることが日本と国際援助におけるコンサルティングの最も大きな違いの一つにあげられます。そこでは日本のコンサルタントは現地の状況に詳しい現地技術者の協力を得たり、また日本以外の援助国、援助機関、外国人コンサルタントが業務を行っている場合は効率的な援助を行うためこれらの国、機関、コンサルタントと協力、協調して業務を実施していくことが必要となります。また最近では日本の援助機関の業務に外国人コンサルタントが団員として参加することも多くなり、いろいろな国の経験をもつコンサルタントと一緒に仕事をする機会も増えてきています。
(4)コンサルティング分野
 コンサルタントの活躍分野は従来は国内・海外を問わずハード面のコンサルティング、つまり建設コンサルティングの比率が高かったようです。しかし開発途上国では、ハード面 の援助だけでは援助の効果を十分発揮できないことがしだいに理解されてきており、最近では経営・組織の改善などのソフト面 のコンサルティングも重要となってきています。このようなソフト面のコンサルティング援助は地球環境と開発、女性と開発、人権と開発、宗教と民族問題にまで広がってきています。したがって、民間のコンサルタントの守備範囲を超えるような制度的、政策的および組織運営にかかわる問題解決へのコンサルティングまでも期待されるようになってきています。
(5)コンサルティングの業務フロー
 日本国内と国際協力におけるコンサルティングの業務フローの違いを図1に示します。国内のコンサルタント業務の特徴としては、官公庁の部分的な作業の代行という日本のコンサルタントの発生起源もあり、計画、設計への部分的な参画が多いことがあげられます。一方、国際協力におけるコンサルタント業務は、開発途上国における事業の発掘から参画し、計画(マスタープラン)の立案、実現化調査(フィージビリティスタディ)、設計、施工監理を行います。また、最近では、経営・組織や日本国内では比較的少ない入札監理を含んだトータルコンサルティングが要求されてきています。

2.日本国内と国際協力での水道コンサルタントの業務・役割の違い
 上で述べた一般的なコンサルタントの業務の違いは水道コンサルタントにも同じようにあてはまります。具体的な業務の違いは表1のようにまとめられます。国内の水道コンサルタントは水道システム、基準・指針がほぼ確立したもとで、水道システムの部分的な改善や更新の業務が多く、一方、国際協力では水道の未整備な地域や老朽化などにより十分機能していない地域において、技術(ハード)面 と運営、組織、資金調達などのソフト面をも含めたトータルシステムのコンサルティングが主となります。

3.国際協力における水道コンサルタントの役割
(1)水道事業の発掘などの初期の段階から参加し、計画・設計、財務・経済分析、資金調達のサポート、施工監理、完成後の運営指導など水道事業全般 にわたるコンサルティングをします。立案した適正な計画や事業が実現するようなコンサルティングを行います。
(2)日本国内とは異なる多様な気候、風土、文化、経済社会状況のもと、日本国内の基準・指針を絶対視しないコンサルタント独自の調査と判断のもと、各途上国に最適な技術を導入します。
(3)コンサルティング業務を通して開発途上国に技術移転をします。
(4)水道分野の国際協力において、広い分野のコンサルティングが日本のコンサルタントに期待されるようになってきています。特に経営・組織改善などのソフト面 のコンサルティングが事業実施にとり重要なキーポイントとなってきています。ソフト面 のコンサルティング力を強化し、ハード面の援助をさらに有効に活用できるようにすることが、これからのコンサルタントの重要な役割の一つです。

【参考文献】

1)山口仁秋:コンサルタント読本,国際開発ジャーナル,p44,1976.
2)和田正武編:海外コンサルティング産業史,海外コンサルティング企業協会,p99,1994.
3)海外コンサルタントオリエンテーションセミナー,海外コンサルティング企業協会,1995.

(芳賀 秀壽、岩橋 一好)

図1

表1

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