5.2 水 源


Q138
乾期が6カ月以上も続く地域における水資源開発で、わが国の技術者が留意すべき点を説明してください





  Key words:半乾燥地域、乾期、ダム貯水池、人工涵養

 半乾燥地域では雨期の間の降雨はすぐに河川に流出するか、蒸発してしまいます。よって乾期にはほとんど河川流出はありません。また年によって降雨量 の変動が大きいことが特徴としてあげられます。

1.表流水開発
 表流水の開発は上述の水文特性からダム貯水池の建設が必要です。ダム貯水池建設について留意すべき点は、半乾燥地域では山岳地においても流域の植生が乏しく流出土砂が多いことがあげられ、貯水池の堆砂を十分に検討する必要があります。上流域において砂防ダムの設置や植林、耕作地の改良などによる流域保善も考慮すべきことと考えられます。

2.地下水開発
 地下水開発の利点は一般に飲料用に適した水源を早期に開発できるという点です。地下水の開発は水文地質条件に大きく左右されますが、地下水の涵養条件、ポテンシャルの把握、物理探査など、十分な地下水調査を行う必要があります。途上国においてはこのような地下水調査技術が未熟のため、長年にわたり数多くの井戸掘削を行ったものの、そのほとんどが空井戸であったというようなケ−スもみられます。また過剰揚水による井戸水の水質悪化や枯渇といった事態を引き起こさないために、適切な揚水管理を運営主体に徹底させる必要があります。


3.半乾燥地域の水資源開発の問題点
 半乾燥地域での水資源開発では、限られた水源から遠く離れた受益地に導水することが必要な場合があり、そのため初期投資が大きくなりがちです。特に規模がそれほど大きくない地方給水の場合、給水人口が少ないことや、住民の水道料金支払い能力を考慮すると、補助金による支援などがなければ事業化が困難であることが問題としてあげられます。
 途上国では多くの場合、地方村落の水源は施設を有しません。よって住民は近くの浅井戸や湧水から水を得るか、時には数時間を要して遠く離れた水源まで毎日水を汲みに行くというような状況にあります。給水量 は必ずしも十分とはいえず、水質が飲料用に適していないものも少なくありません。乾期には水の確保に困窮することがしばしばあります。
 このような既存の水源にも改善の余地があると思われます。住民が馬・ろばなどの家畜を連れてきて水を運搬するため、水源周囲に家畜の排泄物が散乱していたり、井戸に蓋がないためゴミ・土埃が入ったりして、不衛生な状態となっているものが数多くみられます。あるいは湧水で豊富な湧出量 があってもタンクがなく、貴重な水源であるはずなのに流しっぱなしになっていることもあります。
その他、さらに降水量の少ない地域ではダム建設にあたり、貯留した水を放流する際に下流で地下に浸透(人工涵養)させ、地下水源を増加させるという方法も検討されています。また後述(Q141)の天水利用も考慮すべき事項と考えられます。 


(荻野 正之)

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