5.2 水 源


Q139
途上国における節水対策、渇水対策の考え方について説明してください





  Key words:水源、渇水対策

〈渇水対策の考え方〉
 水道の水源として考えた場合、先進国であろうと途上国であろうと渇水対策に対する基本的な考え方、方法論はあまり変わらないと思います。その一つは、限られた水源の水を節約し、または使用量 を減じ、一定の水量を確保することであり、他の一つは別の水源から何らかの方法で水を補給することとなります。水源の水を確保する方法としては、機器の調整を行い、水圧を低下させて流量 を減ずる方法や、マスメディアを通じ個人個人の水消費量を減らし、システム全体として保有する水量 を確保することも行われています。
 一方、他の水源からの水を補給する場合として、緊急時に船や車両などによる他の水源からの水の輸送や、新たに井戸を掘削する方法などがあげられます。また、途上国のなかでも比較的技術の進歩している国においては、水源となる湖や貯水池を導水路(開渠または管渠)で連結し、水源のネットワーク化により不足する水源水を(ダイナミックな解析により)補う方法がとられています。こういったケースは自ずとプロジェクトの規模が大きくなり、OECFや世界銀行などの借款により実施されることが多くなっています。
 途上国のなかには、大きな人口を抱え年間降雨量が500mm前後の都市が多々見受けられます。その1つの例として、トルコのイスタンブールでは1989年から1990年にかけて生じた、10年に一度といわれる渇水時の対策として、飛行機によりクラウドシーディングを行い、人工的に雨を降らせています。さらにこのとき、比較的塩分濃度の低い黒海の海水をポンプアップし、1億8700万m3の容量 を有するテルコス湖に送水し、不足する水量を補ったことがあります。ただし、この方法は湖の生体系を破壊するおそれがあるため、大規模には行われなかった模様です。いずれの方法も水不足を補うための苦肉の策といえます。
 他の水源から水を補給する方法として天水の利用があります。天水の利用は降雨量 の少ない砂漠地帯だけでなく、年間降雨量が多いが河川がなく、地下水の塩分濃度の高い島国にも数多く見受けられます。ただし、これらの国で行われている天水利用は渇水対策というより、恒常的な水不足の解消に役立てているといったほうがよいかもしれません。

(岡崎 敬介)

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