5.3 水 質


Q148
多くの途上国では、水質が不安で煮沸して飲んでいますが、これにどう対応すべきですか





  Key words:水質、煮沸消毒、塩素消毒、残留塩素、水質管理

1.煮沸の意義
 多くの途上国では、飲用には水道水を煮沸してから用いることが習慣になっていたり、ボトルウォーターが用いられています。これは、不十分な塩素消毒や配給水系での再汚染などにより、衛生上の安全性が保障されない水道水に対する使用者側の自衛手段といえます。
 また、一部途上国の首都圏では浄水器が普及しつつあり、浄水器を使用すれば安全な飲料水が得られるとの認識もみられますが、浄水器に過大な信頼をおくことは安全とはいえません。フィルターの種類によっては病原菌などの微生物は除去されませんので、このような場合にも煮沸による消毒が有効となります。
 このような途上国における水道の実態を考えた場合、水道利用者が行う煮沸については、これを妨げるべきではないといえます。

2.代替策としての消毒
 前述のとおり、途上国では煮沸消毒は安全な飲料水確保のために必要な措置といえますが、必ずしもすべての人が水道水を煮沸してから飲用するとは限りません。特に、途上国では煮沸のための燃料代も欠くような低所得者層が多い状況も考慮する必要があります。そこで、水道水における衛生上の安全性確保の重要性を認識し、十分な塩素消毒を行い、給水栓までの残留塩素を確保することが必要です。このためには、水源から給水栓までの総合的な水質管理が必要であり、適正な施設整備と維持管理が求められます。まず、塩素消毒の徹底を図ることですが、経費節減のために塩素注入量 が十分でないなどの不適切な運転管理の改善が必要です。また、残留塩素の確保の観点からみた配水管網構造とすること、二次汚染の防止の観点からの配水管水圧確保と同時に、配給水系における残留塩素のモニタリングを実施することが必要です。さらに利用者に対する衛生教育と広報活動により、水道水の安全性についての理解を得ることも重要です。

(小田 直正)

戻る    次へ

コメント・お問合せ