5.4 浄水場の計画と設計


Q162
途上国の浄水場における塩素剤の選定、注入方式、注入量 の設定で留意すべきことは何ですか。トリハロメタンのことをどこまで考えますか





  Key words:浄水場、塩素剤、トリハロメタン

1.塩素剤の選定
 日本では次亜塩素酸ソーダによる塩素注入が一般的ですが、これは日本に製造会社があり品質のよいものが安定して供給されるからです。一方、途上国においては塩素ガスを使用している国が多いと思われます。この理由としては調達が容易、安定して供給される、注入に必要な設備が比較的簡単で建設費が安い、運転が容易などがあげられます。一方、さらし粉は塩素ガスに比べ設備が大きくなり操作も複雑になります。途上国で消毒設備としての塩素剤はこれらの点を調査、検討したうえで選定します。

2.注入方式
 途上国でよく使用される塩素ガスとさらし粉について説明します。
(1)塩素ガス
 塩素ガスは取り扱いが容易であることが利点ですが、途上国で生産される塩素ガスには不純分が多く含まれています。これが塩素ガスの配管中で閉塞したり注入機に混入して破損をまねくケースが多くあります。したがって注入機には必ず予備機を設置し予備品を十分納入することが重要です。またガス配管にはミストなどの不純物を除去するフィルターを設置します。これも並列に2個設置することが望まれます。塩素ガスの注入はエジェクターを通 して給水配管に注入しますが、このときに使用する給水ポンプは塩素用に単独で設けることが望まれます。他の用途のポンプと共用とするとエジェクターで必要な真空圧が得られず運転が不安定になることがあります。寒冷地では気化器を設置し安定して塩素が供給できるようにします。
(2)さらし粉
 さらし粉を使用する場合、塩素ガス同様、不純物が多く含まれていますので取り扱いには注意が必要です。溶液中の不純物を除去するストレーナーを設けますが、すぐに閉塞するので容易に洗浄できるよう洗浄配管を設けます。またポンプ自身の閉塞もありますのでやはり予備機が必要になります。溶解作業時にはさらし粉の粉塵が舞うので作業者の安全対策(マスク、メガネ、安全着衣など)が必要です。

3.注入量の設定
 途上国のなかには処理水の残留塩素濃度を日本の基準より高く設定しているところがあるので現地調査で確認しなければなりません。注入量 はこの残留塩素濃度に加え、管路などによる消費量、水中に含まれる鉄、マンガン、アンモニア性窒素などにより消費される量 から決定されます。したがって、管路計画の把握、原水の水質調査が重要です。特に水質については年間を通 したデータを調査し、水質変動などを考慮したうえで注入率を決定することが大切です。よく既存の浄水場の運転管理者から注入量 を聞き取り調査して決定することがありますが、やはり水質データを分析して決定すべきです。


4.トリハロメタン(THM)について
 途上国では現状、水需要に対応した浄水場をいかに早く建設するかに注力されています。したがってトリハロメタン低減を考慮している浄水場は少ないと思われます。しかし今後はトリハロメタンも除去対象項目となっていくと考えられますので、施設の計画においては凝集沈澱処理の徹底、塩素注入点の変更などの措置がとられていくと考えられます。

(横尾 弘一郎)

戻る    次へ

コメント・お問合せ