5.4 浄水場の計画と設計


Q165
途上国で緩速ろ過方式があまり採用されていないのはなぜですか





  Key words:浄水場、緩速ろ過方式

〈緩速ろ過方式が採用されない理由〉
 緩速ろ過方式は原水の水質が比較的良好で、濁度が年平均10〜30度以下の場合に採用できます。このような原水としては地下水、富栄養化の進んでいないダム水、湖沼水、汚濁の進んでいない河川水などがあげられます。
 この方式は砂層と砂層表面に増殖した微生物群が水中の不純物を捕捉し、酸化分解する作用を利用したもので、原水をゆっくり流す必要があります。維持管理が容易で安定した水質が得られる反面 、ろ過速度が遅いため広い面積と表面の砂の掻き取り作業が必要となります。
 建設費は急速ろ過方式に比べかなり安くできますが、以下の理由で緩速ろ過方式が採用されないと考えます。
(1)雨期、乾期など季節により水源の水質が大きく変動する地域においては、十分な処理が期待できません。
(2)途上国でも大規模な浄水場の建設は、人口の密集した都市部が対象となります。都市部では人口集中による土地不足に加え、土地代の値上がりにより緩速ろ過方式に必要な敷地面 積を確保することが困難になってきています。
(3)維持管理が人力主体となるため好まれません。
 これらのことから途上国においても急速ろ過方式が多く採用されています。

(横尾 弘一郎)

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