5.5 浄水場の電気・機械・計装の計画と設計


Q168
途上国での電気設備の維持管理において、特に注意すべきことは何ですか





  Key words:浄水場、電気設備、保安規程

1.維持管理に関するルールの確立
 わが国の場合、水道施設に限らず、一定規模以上の電気工作物(電気設備)は、電気事業法により自家用電気工作物と定義され、工事・維持および運用について法の規制を受けています。その法律により、自家用電気工作物の工事、維持および運用に関する保安の監督をさせるため主任技術者を選任すること、保安を確保するため「保安規程」を定めることが規定されています。「保安規程」は主任技術者を中心とする電気工作物の保安管理組織、保安業務の分掌、指揮命令系統などの保安体制の確立とこれら組織によって行う具体的保安業務の基本的事項を定めるもので、自家用電気工作物の保安が大幅に自主規制に委ねられていることから、自主保安体制の整備確立が完全に行われるものでなければならないとされています。その内容は、
(1)業務を管理する者の職務および組織に関すること
(2)保安教育に関すること
(3)巡視、点検および検査に関すること
(4)運転または操作に関すること
(5)災害その他非常の場合にとるべき措置に関すること
(6)保安についての記録に関すること
(7)その他の保安に関して必要な事項
となっています。
 また近代水道に100年以上の実績のあるわが国には、水道に関する法律「水道法」が確立し、水道施設の計画・設計、維持管理に関しても專本水道協会より「指針」が示され国内の技術は全国的に一定以上のレベルを維持発展させています。一方、途上国では、わが国の水道法にあたるような法律や水質基準、電気事業法や電気設備の技術基準や製品の規格といった法令や技術規格といったことについてもさらなる整備が必要である場合が多く、それぞれの技術者の知識についても現場での実践経験の多少などにより偏りが出てきます。先にあげた「保安規程」の具体的内容の(1)〜(7)を浄水場全体もしくは電気設備についての維持管理体制づくりに反映させることが重要です。まず、運転操作員・保守要員・責任者などの組織を構成し、それぞれの役割を明確にしておくことが必要です。ここでの役割とは、仕事の内容とともに必要とされる技術力も明確にしておくべきでしょう。それぞれの役割を履行するために必要な研修計画を作成し定期的に実施し、浄水場の運用に必要な技術水準を一定に保ちノウハウを蓄積していかなければなりません。特に、責任者の地位 にある者の技術レベルが今後の維持管理を大きく左右する要因となります。教科書や参考書で学んだ内容が実際にどのようなかたちで水道施設で利用されているか、それらの機能を維持させていくにはどういったことに留意し、どういった対処をしなければならないかを明確にしておくとともに、運転操作員や保守要員に教える必要があります。
 現場の設備機器に精通し、的確な対処を運転員や保守要員に説明のできる人材の確保育成が重要な課題です。さらに、監視室や電気室に設備の概要を示したフローチャートや単線結線図を見やすい大きさのパネルにして掲示し、日常業務の間にも設備の概要を反復できるようにする必要があります。そして、電気設備にトラブルが発生した場合に、他の設備にどのような影響を及ぼすか、どういった対処が必要かを確認しておく必要があります。展開接続図などの図面 の管理も重要な課題です。図面保管室などに図面一式を保管するとともに、日常業務で活用する分については、出し入れの容易な適当な場所に常備しておき、運転員や保守要員に身近なものという意識をもってもらうことも必要です。

2.補修部品の確保・保管および試験・補修の実践
 維持管理に関するルールの確立とともに重要なことは、試験・補修の実践と補修部品の管理です。
(1)試験器具の活用
 テスター、絶縁抵抗計、接地抵抗計、検電器などの試験器具は設備を正常に保つための必需品といえます。施設建設時に準備する必要があります。また、正しい使用法を周知し、日常の点検業務に活用し、予防保全に役立てます。
(2)補修の実践
 低圧の電磁接触器や電動機は接点の補修や軸受の交換で所期の性能を回復し再利用が可能です。こうした軽微な修理を現場で行えれば、経費の節減や技術力の向上・浸透につながります。必要な工具類と修理スペースを確保し、運転員や保守要員の知識・技術習得の場とすることが必要です。
(3)補修部品の保管リストの作成
 補修部品は保管庫などに一括保管し、リストにより部品の出入りをチェックするとともに、頻度の大きい部品などを確認し、故障の傾向を検討します。  

(小山 達也)

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