5.5 浄水場の電気・機械・計装の計画と設計


Q171
途上国でのポンプ設備の維持管理において、特に考慮すべきことは何ですか





  Key words:浄水場、ポンプ設備、維持管理計画

 途上国でのポンプ設備の維持管理において特に考慮すべきこととして、次のようなことが考えられます。

1.維持管理を行う体制
 維持管理する体制を整える必要があるのですが、その場合次のようなことが必要です。
(1)維持管理の計画作成
 ポンプ設備のみならず、その設備の維持管理をするためには、日本でもどこの国でも同じですが、故障を予防する維持管理計画を立てる必要があります。
 ジャカルタ市プロガドン浄水場現況調査報告書1)によれば、「浄水場の維持管理計画をたて、故障してから対処するのではなく、故障しないよう維持管理をしなければならない。(中略)また、維持管理計画としては、毎日各施設の検査を行い、どこを修理しなければいけないかを見極め、日・週間・月間・年間の計画をたてることである」と記されています。
 1)必要な人材
 上記計画を作成するためには、その設備の維持管理計画を立てる人材が必要ですが、多くの途上国では不足しています。したがって維持管理のための技術、技能を修得するための訓練研修が必要となります。
 2)消耗部品などの購入予算
 維持管理計画を立て執行するためには、費用の予算化が必要になります。あるいは予算化後に計画を立てるのか、いずれにせよ維持管理を行うには、工具、消耗部品などの購入が必要であり、そのための予算が適切に組まれる手だてが必要です。

2.安全第一
 危険な作業を現地労働者に無防備でさせている場合が多く、保護具も用意されていない場合が多いので、定期的に現場に出向き確認することが必要です。
(1)作業中の事故防止、保護具の着用
 救急処置、医療の体制が不十分な地域が多い途上国では、特に労働災害を起こさないよう対策を考えておくことが重要です。また万一の事故に備えて、保護具の着用を現場作業員などに徹底させておくこともまた必要です。
(2)途上国の安全衛生に関する規則など
 途上国に安全衛生に関する規則などがあれば、その規則などに従うことはもちろんのことです。

3.各種記録データの必要性の認識
 一般的に現場での作業が軽視される傾向にあり、特に定期的に行う設備の運転記録が故障の発見、予防につながり、経済的な設備の運転になることが理解されていない場合が多いようです。したがって、いつも機会があれば、データの重要性について説明し、幹部から作業員にまで認識させることも必要です。

4.気象条件などによる維持管理の違い
 故障時の対応、診断については、現地の気象条件などや生活文化の違い(Q170参照)に起因することもあるので注意してください。

5.ゴミに対する維持管理の強化
 途上国の実情として、ゴミの収集処理が立ち遅れている場合が多く、河川などに投棄される場合が多いようです。したがって特にポンプ設備の維持管理においてはゴミに対しての対応を考えておかねばなりません。
(1)スクリーン
 スクリーンの点検整備、清掃(洗浄)回数については現地取水河川などへのゴミ投棄の実情を必ず考慮しておく必要があるでしょう。
(2)取水ポンプ
 取水ポンプについても、点検整備の回数を多くし、さらに頻繁に清掃する必要があるでしょう。

6.流量計、水位計、圧力計
 流量計、水位計、圧力計などの修理調整(取り換え)方法については、特に明確にしておくとともに、予備品を必ず確保しておいてください。

【出 典】
1)日本水道コンサルタント,ジャカルタプロジェクト事務所:ジャカルタ市プロガドン浄水場現況調査報告書,(和文概要集),p1―10.

(丹羽 繁生)

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