5.7 管路の計画と設計


Q184
途上国において、建設資金の限られたなかで、管種・管材の選定の考え方を示してください





  Key words:管路、管材、管種、トータルコスト、ISO

 水道施設は取水施設、導水管、浄水施設、送水施設、送水管、配水池、配水管、給水管などで成り立っていますが、取水/浄水などの施設が点であるのに対し、管路は線あるいは面 といえます。
 すなわち、一度埋設した管路の整備、改善、取り替えなどは、点の施設に比べ多大なコストとエネルギーを必要とします。したがって、建設資金が限られた場合でも、できる限り耐久性に優れた維持管理しやすい管材を使用することが、結果 として安全性の高い、しかも低コストの施設を構築することになります。
 建設資金の限られたなかでの管種・管材の選定の考え方は以下のとおりです。

1.トータルコストで考える
 管路の建設コストは材料費だけの比較になりがちです。しかし、実際は工事費や維持管理費を含めたトータルコストで比較しなければなりません。さらに管材別 耐用年数を考慮した減価償却費や再建築費を重要な要因として加えることで、適正な比較を行うことが可能です。

2.プロジェクトの見直し
 建設資金が限られている場合でも、耐久性に優れた維持管理しやすい管材を使用すべきです。プロジェクト規模の縮小やプロジェクト期間の延長により、たとえ建設費が割高でも長い目でみて優れた管路を建設するべきです。

3.使用条件により管材を使い分ける
 建設資金が限られている場合でも、安易に信頼度の低い管材を使用してはいけません。しかし、やむをえない場合は、使用条件により管材を使い分けることも考えられます。
以下にその一例を示します。
(1)人口密度や地域特性で使い分ける。たとえば、
  urban:ダクタイル管
  semi―urban:ダクタイル管とPVC管の併用
  rural:PVC管
(2)管路の重要性で使い分ける。たとえば、
  主要な幹線および配水管:ダクタイル管
  交通量の多い道路下:ダクタイル管
  末端管路:PVC管
 上記のように使い分ける場合においても、可撓性や水密性に優れた継手を有する管材、および国際標準化機構(International Organ-ization for Standardization:ISO)や主要国家規格(JIS、BS、ANSIなど)に適合した管材を使用すべきです。
 いずれにしても、日本政府の経済援助の方針は、よい品質の材料を使用し、恒久的施設を建設することであることを忘れてはいけません。

(鈴木 繁, 家始 健)

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