5.7 管路の計画と設計


Q188
「管路の老朽化、能力不足、漏水量も多いので、リハビリテーションプロジェトを要請する」この考え方のどこに問題がありますか





  Key words:管路、リハビリテーション、技術協力

〈管路老朽化の背景と責任分担〉
 どのような背景で要請がなされるかによって要請に対する対応が異なってきますが、基本的には、管路の維持管理は、当該水道事業体の固有業務であるにもかかわらず、途上国のなかには、これを資金援助で解決しようとする安易な姿勢が見受けられます。途上国における要請の主な理由としては、石綿セメント管の高使用率と埋設深度不足に起因する管路の亀裂や破損による漏水の多発、施工不良による漏水、急激な都市開発による人口集中が原因となった出水不良、不法配管による無収水量 などさまざまな原因が複合化されています。このことからも、まず要請国側の実状調査から開始するのが賢明であると考えます。相手国側にリハビリテーション(以下、リハビリ)計画に対する長期財政計画、管路整備計画、無収水量 抑制計画といった具体的な将来計画や基本計画があり、その実施計画に基づいて提出された案件ならば、それらの見直しをかけるという意味では、検討する価値があります。しかし管路整備などの工事にかかわる費用などは、当該水道事業体の固有業務であると考えられ、資金協力による管路リハビリの範囲は限定されたものとなります。また、計画立案に対する支援などの技術協力は有効と考えられます。
 国際協力事業団(JICA)から現地に技術協力専門家(以下、専門家)が派遣され、現地の状況を把握したうえでの要請については効果 が期待できます。途上国の水道運営は公営事業で経営されている場合が多く、専門家は政府職員と共同で業務を行っており、現地の事情に詳しい政府職員をキーステーションとしてリハビリプロジェクトが展開されることから、現地の状況に即した要請内容となっていると考えられます。なお、組織編成、業務体系、技術教育などの整備も含め、実施効果 を考慮して管路のリハビリ計画を立てることが望ましいと思います。

【事業例プロジェクト名】
JICAでは、管路のリハビリのみを対象とした調査団などの派遣はこれまで行っていませんが、管路リハビリを主目的とした開発調査業務は何度か派遣されています。
カンボジア「プノンペン市上水道整備計画調査」(1993〜1994年)
インドネシア「ジャカルタ市水道整備計画調査」(1993〜1994年)
ヨルダン「ザルカ地区上水道施設改善計画」(1994〜1996年)
スーダン「首都圏給水計画」(1988年)
カンボジア「プノンペン市上水道整備計画」(1993〜1994年)

(諸我 敏夫)

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