5.8 管路の維持管理とリハビリテーション


Q190
管路のリハビリテーションを援助対象とする場合、維持管理が適正に行われていたかをチェックするポイントは何ですか





  Key words:管路、リハビリテーション、維持管理

 維持管理部門がうまく機能していない背景にはさまざまな要因が考えられますが、潜在しているそれらの阻害要因を以下に示し、チェックポイントに替えます。

1.施設整備の問題
(1)設計基準、施設整備計画関係
 1)設計、施工基準がない。
 2)設計基準に基づいた設計が行われていない。
 3)施工基準に基づいた施工が行われていない。
 4)総合的な配水システムを考慮した施設整備計画がない。
 5)必要なデータの不備や不足が将来展望を含めた長期計画の不在をもたらしている。
(2)維持管理計画関係
 1)維持管理基準がない。
 2)維持管理基準に基づいた維持管理が行われていない。
 3)維持管理の重要性に対する認識が不足している。
 4)各種データの蓄積や整理がされていない。
 5)図面類が整備されていない。
 6)各種データが有効に活用されていない。
 7)漏水防止対策は管破裂事故などの緊急対策に追われ、総合的漏水防止対策が行われていない。

2.人材や技術能力の問題
(1)人材関係
 1)専門知識や技術能力のある人材が不足しており、人材の育成が遅れている。
 2)途上国では、水の生産部門や拡張部門に力を入れており、必然的に維持管理部門での人材が不足している。
(2)技術能力
 1)技術者の不足および経験不足のため業務内容が場当たり的であり、計画性がない。
 2)技術能力を高めるための訓練・研修が不足している。
 3)職員の基礎的な能力が不足している。

3.組織や制度の問題
(1)技術の継承、指揮伝達
 1)技術の継承が組織的に行われていない。
 2)技術が設計基準、施工基準などで統一されていない。
 3)技術者による適切な指導が下部組織まで行き渡っていない。
 4)仕事が個人の考えで左右されている。
(2)政策や制度
 1)維持管理体制に対する取り組みが弱い。
 2)工事の監督や検査を行う体制が機能的に働いていない。
 3)人材や技術の不足に対して、不足を補う制度がなされていない(民間活力の登用)。

4.資金の問題
(1)財政制度
 1)水道事業にかかわる費用が独立採算の原則に立っていないので他の部門に料金収入が流用され、十分な維持管理費用が獲得できない。
 2)事業体への国の補助制度が維持管理部門へ提出されにくい。
 3)全体的な資金不足から維持管理部門への予算配分が十分でない。
(2)資金不足
 1)資金不足を補うためアジア開発銀行や世界銀行のような国際貸付機関への取り組みが十分でない。
 2)受益者負担の原則の不徹底による料金徴収制度の機能低下などの非能率的な事業運営がめだち、これが資金不足の要因の一端となっている。

(佐藤 亮一)

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