5.8 管路の維持管理とリハビリテーション


Q191
途上国では、配水管路の途中で汚染されることが多いですが、その原因を説明してください





  Key words:管路、漏水、水質汚染

 途上国は漏水率が高く、埋設管路では日常的な破損事故が続いており、地上に現れない自然漏水も多いと思われます。計画的な漏水調査作業の遅れや漏水事故の大半を占める老朽化したアスベスト管の敷設替えなどの施設整備の遅れにより、このような状態の早期改善は期待できません。また、途上国の多くは、急激な社会環境の変化が進み、これに対応できないまま、配水管路を取り巻く環境も未整備の状態で放置されています。このような複合的な要因から次のような水質の汚染が考えられます。

1.施設管理の不備によるもの
(1)管体、継手、空気弁、排水弁、メーターなどの漏水や破損により管内水圧が低下し、高水位 地下水などが漏水箇所から管内に入り水道水が汚染される。
(2)給水装置に対する条例の不備により管路能力に対して過大な受水ポンプを設置する例があり、これによる強引な吸引により配水管の圧力が低下し、漏水箇所から汚水が管内に入り水道水が汚染される。
(3)給水装置と井戸や貯水機能のある装置などと不法な接続が行われている場合があり、断水時や減圧時に配水管へ逆流して水道水が汚染される。

2.配水操作や管路の機能低下などに起因するもの
(1)消火用水の多量な放水や水使用量の増大により水圧が低下し、漏水箇所から汚水が管内に入り水道水が汚染される。
(2)配水管の能力が不足している管路に揚水ポンプが直接分岐されている場合、ポンプ運転中に配水管の水圧が低下し、漏水箇所から汚水が管内に入り水道水が汚染される。
(3)配水操作でバルブを閉じたときに水圧が低下し、漏水箇所から汚水が管内に入り水道水が汚染される。
(4)蛇口の先にホースなどが接続され、このホースなどの先が汚水や液体内に挿入されている場合は、配水管が負圧になったときにこの汚水や液体が管内に入り水道水が汚染される。

3.洗管基準の不備および不徹底
 新設管の洗管不良や消毒不良により水道水が汚染される。

 以上のとおり、水道管路の漏水および施設整備の遅れや維持管理の不適切が水圧低下を起こし、漏水箇所から外部の汚水が管内に浸入する潜在的な可能性を有しており、このことに対する認識の不足や水質の安全性に対する配慮が十分でないことが原因と思われます。

【参考文献】
1)小林康彦:水道管路の研究開発の方向,水道技術研究センター,1988.

(佐藤 亮一)

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