5.8 管路の維持管理とリハビリテーション


Q193
種々のマッピングシステムについて説明してください





  Key words:コンピューターマッピングシステム、CAM、AM/FM、GIS

 日本において1990年初頭までコンピューターマッピングシステムは、「コンピューター支援地図作成(CAM:computer aided mapping)」、「自動地図作成/施設管理(AM/ FM:automated mapping/facility management)」と「地理情報システム(GIS:geographic information system)」の3種類に分類されていました。また、コンピューターマッピングシステムの使用事例が多いアメリカなどでは、コンピューターマッピングシステム全体を総称して“GIS”と呼んでいます。なお、現在は日本においてもコンピューターマッピングシステムを区別 して呼称することがなくなってきており、アメリカと同様に“GIS”と称するようです。これらのシステムは地理的に関連するデータを入力、記憶、編集、表示する業務に用いられる共通 のカテゴリーに属しながら、性質や用途がそれぞれ違っており、データ構造の形態にもそれぞれ特徴があります。
 コンピューターマッピングシステムは、コンピューターを利用してデータベース化された地図を作成し、その地図データをもとにしてデータの加工、検索を行ったり属性データと連動して地図情報を検索することを可能としたもので、容易に複合したデータの積み重ねを行ったり、複数のデータを速やかに分析し新たなデータを作成するなど、多目的なデータ分析、データ作成に利用できるハードとソフトを総称しています。また、コンピューターグラフィックスの技術をもとにCADD技術、画像処理技術、電子・電気工学など多岐な技術が複合利用されて構成されたシステムでもあります。
 GISは完全に確立されたシステムとはいえず、需要者側の仕様要求も供給メーカー側のシステム機能もまちまちであり、明解な説明を短い紙面 で行うのは無理ですので本項はあくまでも概要説明にとどめます。

1.CAM(コンピューター支援地図作成:computer aided mapping)の使用例
 これまで地図の作成は多くの時間と労力を必要としてきました。特に完成した地図に手作業で修正を加える場合には、既図を消し込みしてから書き込みをしなければならず煩雑な作業でしたが、それに代わってCADD(コンピューター支援設計・製図:computer aided design and drafting)技術を用いて地図の作成を行うもので、CAMと呼ばれています。地図を構成する等高線、道路、施設などの各主題を1つのグループとして、レイヤーと呼ばれるデータ格納スペースをつくり、そのスペースに各主題ごとに地図構成データを入力するものです。入力可能なデータ表現としては、記号、線(描線)、文字などで、XY座標系を基準として構成されています。したがって、地図を作成する場合には必要なデータを各レイヤーから呼び出し、同じ座標軸上にデータを重ねて行います。しかし通 常三次元の空間関係は定義されないため、この関係を定義するには特殊な処理を必要とします。

2.AM/FM(自動地図作成/施設管理:automated mapping/facility management)
 AM/FMは、CAMと同様にCADD技術を用いています。レイヤーを使用してデータを主題ごと、タイプごとに分けて記憶されていますが、CAMが地図情報の保管、検索に正確性を求められるのに対して、FMではデータの保存、解析、レポート作成の機能を主流としています。地図上の位 置とそれに関連する情報を一体としてデータベース化し、地図情報や属性データの検索や処理を行うことを得意としています。特にインフラストラクチャー関係の施設管理に用いる場合には、各情報をそれぞれ別 のデータファイルに入力しておき、データの作成や情報の分析を行うときにファイル内から必要なデータを呼び出し、その情報を重ね合わせて1つの図面 や資料の作成を行います。また、三次元の空間関係におけるデータ構造は定義されており、ネットワークで構成される関係は、面 が交差する情報のすべてにデータの関連づけを行います。

3.GIS(地理情報システム:geographic information system)
 GISは、主に地理データの分析に用いられます。地理情報そのものをベースとして、情報の加工、解析を行うシステムで、地図表現の対象物を点・線・面 で表し、地区や地域など面要素を主体として、それに関連する属性データ(数値データ)を解析処理する分野です。
 この特徴は、すべての地図データ要素に三次元の空間関係が定義されているところで、都市計画システム、資源管理システム、環境管理システム、地籍管理システムなどに利用され、地図上の線状の地物の相互関係、地域の境界状況の調査や地域間の関係など相互関係の調査検索に有効です。

【参考文献】
1)鎌田靖彦:地図情報システム入門,日刊工業新聞社,1989.
2)水道技術研究センター:水道管路情報管理マニュアル,水道技術研究センター,1991.
3)Korte GB(村井俊治、那須充・監訳):実務者のための地理情報システム,オーム社,1994.
4)日本水道協会・アメリカ水道協会研究基金共同研究報告書:水道事業における計装とコンピュータ統合化,日本水道協会,1995.

(諸我 敏夫)

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