5.8 管路の維持管理とリハビリテーション


Q194
ある途上国からマッピングシステム整備の援助要請があった場合、どう対処すべきですか





  Key words:コンピューターマッピングシステム、基本データの収集整理

1.基本データの収集整理
 途上国ではGIS(コンピューターマッピングシステム全体の総称)を導入することによって、水道事業経営を遂行するために欠落しているあらゆる情報の不足を容易に解決することができると考えています。しかし、GISはデータを管理する一つの方法であり、これを導入するには、しっかりとした基礎データの積み上げがなければ有効なシステムの構築は難しいことを理解していないようです。
 GISは、情報の収集・格納・分析を行う道具として非常に有効なものですが、データベースのもととなる水道の各種データがない場合には、Q192で記したようにデータの整理をしてから新たにデータベースの構築を行う必要があります。それがコスト面 でGIS導入費用(ハード、ソフトを含む)よりも数倍かかることがあります。すなわち、水道に関する基本データのまったくない途上国では基本データの収集整理作業を行うために日本とは違ったスタンスの時間と費用の見積りが必要となってきます。

2.修正か新規作成か
 地図に関してはその国の状況によって違いますが、すでに利用できる地図があれば積極的に使用していく方法もあります。既存の地図を利用する場合には、新規に作成した地図との基準点の持ち方や、基準点のいずれに対して修正して対応することが可能か、修正面 積比率がどの程度であるかによって、地図を新規作成したほうがよいか判断する必要があります。おおむね修正面 積比率が40%を超えた場合には、航空測量方式による新規作成を選択することが賢明です。使用地図の縮尺も利用する業務系によって違ってきますが、配水管路のデータを検索する程度であれば縮尺1万分の1と縮尺2500分の1程度のもので十分です。その後、給水関係のデータが充実してきた段階で縮尺1000分の1や縮尺500分の1の図面 を追加していくのもよいでしょう。

3.現地事情に適したデータベース
 基本データの持ち方も使用条件や目的によってかなり日本と異なると考えられますので、日本の形態をそのまま流用するのではなく、現地事情に適したデータベース構造と表記形態とし、レイヤーの持ち方やクラス分けなども現地の使用条件をよく考慮して決定するのがよいでしょう。アプリケーションソフトも多くの汎用品がありますので利用できるものは積極的に利用し、できる限り多くの業務系のデータを統一化してレイヤー内にデータをダイレクトに読み込む形式とすべきです。なぜならば、GISの立ち上げ後にも常にデータの新鮮さを保つためのデータ更新作業や日常使用のためのオペレーション業務に現地のスタッフがあたることになりますので、なるべく複雑な操作をすることのないようにすべきだからです。

【参考文献】
1)日本水道協会・アメリカ水道協会研究基金共同研究報告書:水道事業における計装とコンピュータ統合化,日本水道協会,1995.

(諸我 敏夫)

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