5.8 管路の維持管理とリハビリテーション


Q195
途上国ではアスベスト管が多く使用されていますが、これの敷設替え計画を援助することができますか





  Key words:管路、リハビリテーション、アスベスト管

〈単一管路のみの援助では効果なし〉
 現在までに、アスベスト管の敷設替え計画に援助した実例はありませんが、管路リハビリテーションプロジェクトに含まれる内容です。
 途上国では、歴史的な経緯と敷設費用が安価なため、現在でもアスベスト管は主要管種として広く使用されており、使用率は70%を超えていると思います。また、全国レベルで有収率が70%以下のケースでは、配水管からの多量 な漏水が散在しているのが一般的です。有収率の向上には、漏水の調査、発見、修理を行う対症療法的対策とあわせてアスベスト管などの老朽管の敷設替え計画が重要な課題となっています。
 マレーシアを例にすると、1995年のデータで都市部の水道普及率99%、地方部では82 %となっていますが、配水管のうち約80%がアスベスト管といわれています。このように普及率の高い国でも無効水量 は約40%以上あるとされており、無効水量の撲滅を水道のスローガンのトップに掲げているほどです。
 アスベスト管は耐久性や耐圧性の面で劣っており、また、石綿の発がん性の面 から日本では製造を中止し、既設のアスベスト管の更新を進めています。このことからも、今後は途上国においても、アスベスト管の使用に対する啓蒙を行う必要があります。しかし、水道の普及率が50%にも満たない途上国にとっては、限られた予算内で可能な限り多くの地区に水道管を敷設することが急務であり、ある程度の使用はやむをえない面 もあります。ただし、主要な管路には使用を避け、交通量の少ない住宅街や歩道などの場所で小口径管の場合に腐食対策を施して敷設するなど、限定した使用に抑えるべきです。
 アスベスト管の敷設替え計画を援助する場合、配水システムとして全体が効率的に運用できるシステムを念頭に考える必要があり、計画的な施策が必要とされると考えます。膨大な延長を有するアスベスト管路に対して、要請国側の総合的な施策のなかで明確な財政政策に裏打ちされた長期計画がなければ、短期間で行う単一管路のみの単純な施設援助だけでは、効果 は期待できないと思います。
 基本的には、要請国側の自助努力を期待し、その喚起を促す程度にとどめることになると思います。

(佐藤 亮一)

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