5.9 給水管の設計とリハビリテーション


Q197
わが国で給水装置の構造・材質が変遷した経過と理由を説明してください





  Key words:給水装置、直結給水、受水槽、給水増圧ブースター、給水管材

1.給水装置の構造
 わが国では、欧米諸国の「石の文化」と異なり、気候風土的条件の違いから「木の文化」といわれ、この文化的条件の違いから家屋構造もわが国とは異なり、欧米では石造りなどの5〜6階建ての中高層建物が林立し、以前からそれら建物に対し直結給水が行われていました。
 それに比べわが国では、近年まで木造住宅が主流で、そのほとんどが2階建て以下の建物であり、近代的水道の創設以来、水道施設は2階建て建物までは直結給水、3階建て以上や大量 に水を使う建物などについては、受水槽方式による給水を行ってきました。
 しかし、近年わが国においても建物の中高層化が進み、それに伴い受水槽経由の水を利用する需要者が急激に増加しました。このような状況のなかで、特に法の規制を受けない受水槽の有効容量 が10m3以下の小規模受水槽施設では、自主管理不十分による衛生面の問題が全国的に指摘され、早急な対策が求められ、国をはじめ各都市においても衛生問題解消の一方策として直結給水対象の拡大が行われるようになりました。
(1)配水管水圧による拡大
 現在、配水管水圧による直結給水対象の拡大は、各都市の施設能力に合わせ3階建て建物ないし、5階建て建物までに対しての実施および検討がされています。
(2)給水増圧ブースター(給水加圧ポンプ)
 配水管水圧による直結給水の拡大については、水圧の関係から給水高さに一定の限界があるため、受水槽を介さず配水管水圧に影響を与えないポンプを給水管に直結し、必要とする水圧の不足分を加圧して直接給水する給水増圧ブースターについて、全国で調査、研究が行われており、一部の都市ではすでに研究が完了し実施しているところもあります。現在わが国では、給水装置へのポンプ直結使用については、水道法施行令に「配水管の水圧に影響を及ぼすおそれのあるポンプに直接連結されていないこと」との規定があり、これはポンプを直結することによる近隣需要家への濁りや水圧低下などの発生を防止し、給水の公平化を図るための規定であるため、給水増圧ブースターの実用については、配水管水圧などへ影響を与えることなく、かつ水使用に支障をきたすことなく給水できることが実証できるものでなければなりません。

2.給水管材質など
 日本の水道創設期から近年まで給水管材の主流は鉛管が占めていましたが、高度な接合技術を要するため施工不備による漏水の発生、また、鉛の溶出による水質への悪影響などの問題から使用されなくなり、現在では化学工業の急速な発達により合成管などの使用が広まってきています。
 給水管材は、各都市とも管材質の特性を生かし、経済性、施工性、耐久性などを加味し、その地方の地理的条件、歴史、経済などに合わせ材質および水質面 などから、より良質な給水管材を求め、適正な事業が推進できるよう採用されています。
 また、水道の計量は、当初、一部計量制がとられたものの、放任給水の割合が高かったので、大都市を中心に徐々に計量 給水への切り替えが進められました。しかし、明治、大正時代には信頼できる国産メーターがなく、イギリス、ドイツなどから輸入されたものが使用されました。国産品としては、大正2年に幾多の失敗を経たのち、販売開始したものが最初です。その後、改良が加えられ、昭和初期には品質的にも輸入品と大差のないものが製造されるようになりました。
 一方、昭和40年代になると、生活水準の向上と生活の都市化を背景として、ガス瞬間湯沸し器、太陽熱温水器、冷水器、浄水器をはじめとして、給水管に接続して使用される給水用具の普及と多様化が進んできました。しかし、これらの器具のなかには、重金属を溶出させるものや、残留塩素を消費することによって細菌を繁殖させるものもあり、水道界としてもその対応を求められることになりました。そのため、專本水道協会において、昭和48年に「給水装置直結器具の型式承認制度」を発足し、型式承認制度が導入されるとともに、適正な使用方法についての指導が行われるようになっています。
 表1にわが国の給水装置の変遷をまとめました。

(石原 健夫)

表1a

表1b

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