5.9 給水管の設計とリハビリテーション


Q198
漏水防止の観点から、給水装置の設計で注意すべきことは何ですか





  Key words:漏水、給水装置、JIS、JWWA

 配水池から需要家に向けて送り出された水の量のことを配水量といいますが、この配水量 は、各需要者が実際に使用した水量と、その途中で水道管から地下などへ漏れた水量 などに大きく分類されます。前者は、有効に水が使われたということで有効水量 と呼び、後者を無効水量と呼んでいます。
 これら無効水量の一因である漏水を引き起こす原因はさまざまで、交通による荷重や振動は管の亀裂や継手の緩みを引き起こし、ある種の土壌は管を腐らせることもあります。また、電車のレールから地中に流れ出ている電流によって生じる腐食は電食と呼ばれ、管に孔をあけます。地中の温度や水温の変化によっても管に歪みができ、亀裂が生じることもあります。また、特別 な原因がなくても、管が古くなればわずかなきっかけで損傷し、漏水が始まります。水圧が過度に大きいと管が内側から破れることもあります。これらのことが、漏水の大きな原因と考えられます。  
 現在、わが国の水道普及率が100%に近づきつつある状況のなかで、特に漏水原因の大部分が給水装置に起因していることが認識されています。図1は、大阪市における道路部分漏水修繕件数の推移ですが、これを見ても給水装置における漏水が非常に多いことがわかります。
給水装置の主要部分を構成するのは給水管であり、十分な強度を有するものであって、耐食性、耐震性などに優れ、かつ水質に悪影響を与えないものでなければなりません。また、給水管はそのほとんどが地中に埋設されており、地下にあるということで保護されている反面 、何らかの原因で傷がついてもそれを見つけることは容易ではありません。
このようなことから、わが国では、給水装置材料の選定は、各都市の水道事業体などにおいて行われていますが、日本工業規格(JIS)または日本水道協会規格(JWWA)に定められた水道用規格品、もしくはこれに準じたもののなかから各工事箇所に最も適した材料を選び、施工しなければなりません。
また、給水装置においては、その設計施工の適、不適が装置の将来の維持管理に及ぼす影響がきわめて大きいので、設計については、給水の確実性が保たれ、維持管理が経済的で、かつ容易であるように、特に考慮しなければなりません。

〈設計上の要件〉
給水装置の設計は現場調査に始まり、給水方式の選定、給水管敷設位置の決定、給水管口径の決定、給水装置設計図の作成および工事費の算出などに至る一切の事務的、技術的措置をいいます。
設計の良否は、将来の維持管理に直接影響を及ぼすものです。
このため、水道事業者は維持管理にあたっての要素を考慮に入れるとともに、経済性および水の有効利用についても十分配慮した設計、基準を制定しておくことが必要です。
なお、設計上の要件は、おおむね次のとおりです。
(1)給水装置全体が所要の水量を満たしうるものでなければならない。
(2)付近の給水に悪影響を及ぼさないよう配慮されなければならない。
(3)給水管内に汚水が逆流するおそれがある装置や構造であってはならない。
(4)当該給水装置以外の水管その他の設備には、直接連結してはならない。
(5)水槽およびプールなどへの落し込み配管には、所定の給水口空間を設けなければならない。
(6)比較的大規模な装置において、給水管内に空気が停滞するおそれのある箇所には、排除装置を設けなければならない。
(7)給水装置は、水圧、土圧その他の荷重に対して十分な耐力を有するもので、かつ、水が汚染され、または漏れるおそれがないものでなければならない。
(8)使用器具は、JIS、JWWAの規格および検査合格品か、それと同等以上の強度・品質などを備えたものを使用すること。
(9)水衝作用(ウォーターハンマー)を生じやすい器具の使用は避けなければならない。
(10)給水管内に水が停滞して、滞留のおそれがあるところには、排除装置を設けなければならない。
(11)凍結、腐食、電食、損傷などのおそれがあるところには、防食、防護の適当な措置を講ずること。なお、給水管は地質その他の条件を考慮して適切な管種を選定する必要がある。
(12)地震などにより不等沈下、応力集中が起こるおそれのある箇所には、有効な伸縮継手その他の工法などを用いなければならない。
(13)大便器用洗浄弁は、汚染防止を図るために、バキュームブレーカー付きのものにしなければならない。また、小便器用洗浄弁は、原則として押しボタン式が望ましい。
(14)メーターおよび止水栓などは、維持管理上支障がなく、かつ点検、取り替え作業などに便利な場所に設置されなければならない。
(15)ポンプとの直結を行う場合は、配水管の水圧に影響を及ぼさないものでなければならない。
(16)設計にあたっては、修理が簡単にできるなど、維持管理が容易にできるよう配慮しなければならない。

(石原 健夫)

図1

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