5.9 給水管の設計とリハビリテーション


Q200
途上国における、給水装置の更新の必要性について説明してください





  Key words:給水管、給水装置

 給水装置には、配水管から分岐した給水管と、これに直結する給水用具、水道メーターが含まれますが、水道メーターについてはQ201〜Q209で述べられていますので、ここでは水道メーター以外の給水装置の更新の必要性について説明します。

1.なぜ給水装置を更新していく必要があるのか
 給水装置の更新の必要性の理由としては通常、途上国において以下のような理由が考えられます。
(1)給水装置がその装置の寿命を越えて長年にわたって使用されている
 途上国では一般に人口増加率が高く、特に水道施設のあるような都市部では地方からの人口の流入などもあり、この傾向はいっそう顕著となります。このような状況で現地の水道局は、既存の給水装置について見直しを図ることよりも、新規の水道加入希望者のために、給水装置の設置に追われることになってしまいます。このようなことから、一度設置された給水装置は長年にわたって供用され続けることになります。
(2)日常の維持管理が不十分である
 上記(1)と同じような理由で、水道局の人員や予算は、なかなか既存の給水装置の維持管理に十分に振り分けられません。また、どのような維持管理作業が必要なのかを評価するための、現在の状況の把握も十分に行われていないのが現実かもしれません。
(3)使用されている材質に不備がある
 たとえば途上国で広く使用されている給水管はPVCまたはGIPですが、これらのパイプを自国で生産している途上国も多くあります。これらの製品の品質向上には、東南アジアにおいては近年目を見張るものがありますが、生産開始当初の製品については、品質も一定でないものが多く見受けられ、これらの材料を使用した古い給水装置は更新の必要があると思います。
(4)水質のモニタリング、コントロールがあまり行われていない
 浄水場から配水される水、配水管網内の水など水道水の水質のモニタリングやコントロールが行われていないケースが多くみられます。たとえば腐食性の高い水が長年にわたって給水装置を浸食し続けることになってしまいます。
 以上のような理由から給水装置の定期的な更新は必要であると思います。

2.給水装置更新のための準備
 給水装置の更新の必要性については上述したとおりですが、更新作業を実施していくためには以下にあげたような準備作業が必要と考えられます。
(1)更新のルール、基準の作成(将来は法律的な根拠の確立)。
(2)給水装置における責任分界(水道局、顧客)の明確化。
(3)更新作業の実施のための長期計画策定。
(4)顧客台帳の整備。
(5)更新のための組織づくり。
(6)必要人員・予算の確保。
(7)人員のトレーニング。
(8)給水装置の問題点の整理と問題発生傾向の把握。
(9)更新優先順位(地域別、経年別など)の設定。
 更新の必要性については各国でいろいろな状況の違いがあるので、さまざまな理由があるかと思いますが、大切なことは、更新を実際に水道事業体が実施していけるようになることですので、上記の準備作業を確実に進めていくことが大切です。また、給水装置更新の計画は、水道施設全体の整備計画と整合するように策定されなければなりません。

3.更新必要性の意識向上
 給水装置にかかわらず、施設・設備には寿命があり時間の経過とともに劣化が生じます。この劣化を減らし、当初の機能を保持させるため、維持管理、更新が行われますが、途上国ではその必要性の認識が低いケースが見受けられます。そこで、この更新必要性の理解を深めるための教育が必要となります。

(間宮 健匡)

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