5.10 水道メーターの設置と保守


Q201
メーターさえ設置すれば、有収率の増加、不明水の削減、料金収入の増加などが見込めますか。あわせて整備すべき設備・機能および組織・制度は何ですか





  Key words:水道メーター、メーター計量制、料金設定

 水道の普及率が低く、使用者の使用量が少ない段階においては、メーターを設置せず定額料金制を採用していても、メーターを設置した場合に比較して、メーターの管理に要する費用、検針費用などが不要なため、経費面 においてメリットがあります。しかし水道の普及率が向上し、使用者間で使用量 に大きな差が生じる段階になりますと、定額料金制の場合は、サービスの公平性が薄れ、むだな水使用が増え、施設の拡張や水資源開発のための費用が増大します。そこで一定の普及率、規模に達した事業体においてはメーターを設置して、使用量 に応じた料金を使用者から徴収して、健全な事業運営に役立てていかなければなりません。

1.メーター設置による効果
 メーターを設置することにより、メーター設置およびその管理に要する費用、点検に要する費用などが必要になります。しかしメーターを設置することにより、水のむだ使いが少なくなり、使用量 に応じた料金徴収が可能となります。そして途上国で定額料金制が採用されている場合、メーター設置により料金収入の増加が見込まれます。また使用水量 がメーター設置により正確に計量可能となりますので、配水量分析を行うことにより不明水量 が推測できます。一方、漏水防止作業を実施することにより、漏水量を減少させ、有収率を向上させることが可能です。この場合、不明水≒漏水量 と仮定した場合、メーター設置により不明水が削減されるということは、直接的には望めませんが、漏水防止作業を実施していくなかで使用水量 を正確に計量し、漏水防止作業の効果として有収率の増加、不明水量の削減を配水量 分析を通じて把握できるという点では、間接的にメーター設置による利点と考えることができます。いずれにしてもメーターを設置することにより使用者の節水意識を高め、水の有効利用を促進し、あわせて使用者に応分の負担を求めることにより事業の健全な運営に効果 が表れます。

2.メーター計量制採用の際の留意事項
(1)メーターの質と量の管理を的確に行う 
 メーター計量制では計量の精度を長期間にわたり維持しなくてはなりませんので、メーター採用にあたっては規格を統一し、計量 精度を確保し、保守、点検の容易なものを採用しなければなりません。また使用開始後は有効期間を設けるなどして計量 精度の維持にも努めなければなりません。そして使用者のメーターに対する信頼を確保するために、事業体としてメーター検査のできる体制づくりも必要です。またメーターが設置される現場条件はさまざまですので、設置にあたっては、一定の基準を設けて、検針、取り替えなどが容易に行えるようにしなければなりません。メーターの設置数が大規模な事業体では、組織としてメーターに関係する業務を総合的かつ効率よく行うために、メーター管理所といったような部所を設けることも必要です。
(2)メーター設置による検針、調定、料金徴収を正確かつ効率よく行う
 メーター設置により検針が必要となりますが、検針を誰が行うのか、その周期、方法など、検針を正確かつ効率的に行うための体制づくりが必要です。途上国においてはマンパワーでの検針になりますが、検針の際の誤検針、誤記入といったヒューマンエラーが数多くあったのでは、メーター設置の効果 が半減しますので、検針員の質の向上のための研修制度の充実、組織としてのエラーチェック機能を整備することが必要です。また料金徴収が定額料金制と異なり複雑となりますので、この面 でのエラーの防止に組織として対応しなければなりません。 
(3)メーター計量制の効果が発揮できる料金設定である
 メーターさえ設置すれば有収率の増加、料金収入の増加が見込まれると思われますが、健全な企業運営のためには、料金設定が企業運営の実状に合ったものでなければ、メーターの設置効果 は表れません。途上国では、水道の普及率向上などのために比較的料金が安く設定されがちですが、国などからの財政援助をも配慮して、財政的な面 からもメーター計量制を支援することが必要です。

(藤本 健夫)

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