5.10 水道メーターの設置と保守


Q202
途上国で、メーター設置後にしばしば起こる問題およびその対応策について説明してください





  Key words:水道メーター、メーター設置基準、メーター計量 制、料金設定

1.メーターの設置
 水道事業を経営するための主たる収入財源は、給水量に対する料金であることはいうまでもありませんが、その算定の方法には定額制と計量 制の2方式があります。定額制とは、一定の料金のもとに自由かつ無制限に水の使用を認めるもので、計量 制とは、メーターを設置することで使用量を量り、それに対応した料金を設定するものです。
 途上国において、メーターを設置することは、使用者に対しての水道料金が大きく異なるとともに、そのメーターを設置するために給水装置の改良工事が必要なケースが考えられ、そのための工事費用なども使用者へ負担を強いらなければなりません。水道料金の問題などについては、日頃から使用者へ水道事業についてPRを行うことが大切です。このように、どこの国でもメーターを設置する際には多くの問題が発生することが予想されます。
 一方、メーターは正確に指示量を点検できなければならず、設置位置は点検および取り替えなどの支障をきたさないよう十分配慮しなくてはなりません。メーターの設置基準については、途上国における地域特性を十分配慮する必要があります。たとえば、水道を供給している街の規模によっては、メーターを公道上(歩道内)に設置したり、また、使用者の宅地内に設置したり、さらには、メーターを地上もしくは地中に設置したりというケースが考えられます。
 これらの設置基準を策定する際は、現状の給水装置、とくにメーターを設置しようとする前後の配管状況について十分調査することが重要です。
 ここで、ある事業体のメーター位置の基準1)について列挙します。ただし、途上国によっては、さまざまな地域特性があり、すべて採用できるわけではありません。
(1)メーターの設置場所は、道路取り付け部に近接した敷地内で検針および維持管理に支障がなく、かつ安全な場所とする。
(2)メーターの取り付け位置は地中とする。
(3)メーターは給水栓より低位に設置しなければならない。ただし、建築物の構造上の都合で給水栓より高位 となる場合は、別に定める配管形態をとること(図1参照)。
(4)メーターは水平に設置しなければならない。
 たとえばタイの首都圏水道公社(Metropolitan Waterworks Authority:MWA)におけるメーターの設置状況は、メーターが宅地内の道路境界に近いところで、地上に立ち上がった形態で設置されています。そのため、メーターが損傷されやすく非常に危険な状態で設置されています。また場所によっては、斜めに傾いてメーターが設置されている場合もあります。
 南米のボリビアにおいては、メーターが破損しないよう宅地内に設置されていたり、宅地内の状況(庭の有無)によって、宅地内もしくは道路の歩道上に設置されたりしています。また、すべて道路の歩道に設置されているところもあります。

2.メーター設置後の問題とその対応策
 水道事業者としては、メーターを設置することで料金水量を知ることができるとともに、給水量 分析を行ううえで、重要な指標の把握ができます。さらに、給水量分析をもとに漏水防止作業計画の効率的な策定を支援することもできます。このように事業者側には、効率的な事業計画を策定することができます。
 一方、途上国の使用者の多くは、メーターを設置することによって水道料金の支出が増えたり、メーターの計測精度を信用しないことによる指示量 への疑問などから、メーターの設置を強く拒否することがあります。さらには、使用者によるメーター破損や盗水なども考えられます。
 タイの地方においては、配水管の水圧(平均0.8MPa)が低いためにメーターの損失水量 により給水栓での吐出水量が極端に少なくなるケースがあります。
 これらの対応策としては、以下のことが考えられます。
(1)水道料金の定額制と計量制との違いのPRと料金設定の適正化
 途上国の都市部では、水需要が増加傾向にあるために、水源開発や漏水防止作業などを推進するうえで計量 制への移行は重要であることを使用者に理解してもらいます。また、使用者の節水意識を促し、急増する水需要に対処します。Key words:水道メーター、メーター計量制、メーター設置
(2)水道メーターの性能のPRとその検査体制の確立
 使用者に水道メーターの計量原理について理解してもらいます。メーターの指示量 に疑問が起こったときは、メーターの故障の有無を調査するとともに、使用状態や給水装置の異常の有無を調査できるようにします。
(3)メーター取り替えの適正化
 検定有効期間で、メーターを取り替えられるような体制づくりを進めます。

【出 典】
1)名古屋市給水工事施工基準.

(伊藤 毅)

図1

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