5.10 水道メーターの設置と保守


Q203
メーターを設置していない途上国が多いですが、これにどう対処すべきですか





  Key words:水道メーター、メーター計量制、メーター設置

1.メーターを設置しない場合の長所、短所
 メーターを設置せず定額料金制を採用している途上国は、定額制の長所であるところのメーターが不要であり、設置のための費用、検針員の人件費など計量 制を採用した場合に比べ経費的に安いこと、また料金設定が単純でわかりやすく、使用水量 の多少にかかわらず収入が安定している点などに注目して、定額制を採用していると思われます。
しかし、水の使用にむだを生じやすく、水道が普及するにつれ、むだな水需要が増加して、その水需要に対応する施設の拡張や水資源の開発のための巨大な資金が必要になり、結果 的には、計量制料金よりも経費がかかることになりかねません。また、少量使用者も多量 使用者も同一料金であるため、公平でないなどの短所があります。
水道の普及率が低く、使用水量にあまり差がない段階では、メーターを設置せず、定額料金制を採用することのほうがメリットが多いかもしれません。しかし、普及率が高くなり、給水量 も増加するようになれば、適正な水需要管理を行うために計量制を採用して、メーター設置による使用水量 の把握をし、計画的な水源開発や施設の拡張を行い、過大な投資を避けるように努めるのが得策です。また、漏水防止作業を計画的に進めるためにも、使用水量 の把握は大切です。

2.対処方法
 メーターを設置していない途上国に対しては、国が発展していくためには、水道をはじめとする社会資本の充実が不可欠であり、その整備には巨額な資金を必要とします。水道の普及が進み給水量 も増加してくると、メーターを設置せずに定額料金制を採用していると、水使用のむだが徐々に多くなり、水源の開発や施設の拡張を早めることになります。結果 として、計量制を採用することにより、むだな水使用が減るとともに正確な使用水量 を把握することができ、効果的な施設整備が可能になります。また、経費の面 においても長期的にみれば、少なくてすむことになるということを理解させ、計画的にメーターを設置させ、計量 制を採用していくように勧めるべきです。

3.メーター設置への検討事項
 計量制を実施するまでには、いくつかの事項を検討しておくことが必要です。
(1)設置時期
 計量制採用の時期について、たとえば、水道の普及との関係からいえば、どの段階になったときに行うのか。現在はどの段階にあり、普及率の伸び率はどの程度なのか。実施までの準備期間やプロセスに無理はないのか。
(2)検針体制
 検針体制については、直営もしくは委託で実施するのか。また、検針の間隔はどうするのか。
(3)メーター管理
 定期的に取り替えるのか。修理や取り替えなど維持管理は誰が行うのか。取り替えや精度の基準はどの程度にするのか。
(4)料金体系、資金計画
 メーター設置にはかなりの額の資金が必要で、資金計画に無理はないのか。メーターの維持管理費を料金収入で回収できる料金体系なのか。メーター使用料のようなものをとるのか。
 これらのことをよく理解し、その途上国のおかれている状況をふまえて、メーター設置に着手することが大切です。
 メーター設置は、多くの時間と資金を必要とします。財政的に厳しい状況にある途上国において、簡単には設置に踏み切れないでしょうが、長期的にみれば効果 が大きく、計画的に準備を進めることの重要性を認識してもらうよう努めなければなりません。

(中村 正規)

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