5.10 水道メーターの設置と保守


Q205
途上国では、精度を多少犠牲にしても低廉で寿命の長いメーターを設置すべきですか





  Key words:水道メーター、メーターの有効期間、メーターの機能、メーターの計量 精度

 たとえば、日本国内で使用する水道メーターについては、計量法により検定有効期間は8年となっています。そのため検定後8年を経過したものについては、計量 法に定める水道メーターとして用いることができないことになっています。一方、途上国においては、水道メーターの有効期間を定めているところは少なく、たとえ定めていても、有効期間内に水道メーターを新しいものと取り替えているところは、ほとんどないように思われます。これは定期的に水道メーターを取り替えるためには多くの費用と労力を要するため、多少の精度の低下はあっても、使用できるうちは使用するという風潮が、途上国においては強いように思われます。

1.途上国における事例
 メーターの有効期間を日本と同様に8年と定めているタイにおいて、南部の都市パッタルン(Pha―ttalung)における使用中のメーターのテストメーターを用いた三上1)の調査によれば口径1/2″〜1″の502のサンプルのうち、日本国内で定める使用公差、基準流量 に対する±4%以内の枠を超えたメーターが、程度の差はあれ数にして55%も使用されていました。また1/2″のメーターのなかには、72%も過進するもの、94%も遅動するものがあり、本来のメーターとしての機能を十分に発揮していないものが数多くみられました。

2.メーターの機能として備えていなければならない条件
 途上国においても水道メーターは、本来メーターが備えていなければならない以下の一般 的な条件を満たしたものでなければなりません。
(1)性 能
 1)計量精度がよい。
 2)感度がよい。
 3)計量範囲が広い。
 4)容量が大きい。
 5)耐久性がある。
(2)構 造
 簡単で修理しやすい。
(3)維持管理
 1)読み取りがしやすい。
 2)取り扱いがしやすい。
 3)故障が少ない。
(4)価 格
 低廉である。

3.途上国で設置するメーター
 たとえば、最近国内でつくられる、一般家庭用の口径13mmと20mmのメーターは、構造が簡単で安価になっており、耐久性が過去の実績から十分にあります。また精度においても計量 法の基準およびISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)のBクラスに適合しています。そのため国内においては一般 家庭用の口径13mm、20mmの場合、接線流羽根車式で表示がアナログ/デジタル併用式、乾式構造、現地読み取り方式のものが広く使用されています。
 水道メーターは、使用水量を正しく計量し、料金算定、有収率把握など適性な水量 管理のための基礎データの提供という重要な役割をもっていることから、一定水準の精度を保ち、耐久性に富んだ低廉なもののうちから現地の使用実態に合ったものを設置することが大切です。設問にあるように精度を多少犠牲にして、低廉で寿命の長いメーターを設置することは、メーター不感率を増大させることになり、有収率の低下につながります。この場合、計量 精度の差による水の損失費が増大するので、メーターの取り替えに要する費用などと比較して、どちらが利点が多いか総合的に考える必要があります。そして大切なことは、メーターに有効期間を設定して定期的にメーターを取り替えるとか、日常の検針などを通 じて定期的に、テストメーターなどを用いてメーターの計量精度を検査して、計量 精度の水準を維持することです。そして異常のあったものに対しては、正しく計量 できるメーターに取り替えることのできる体制が整備されていることです。

【出 典】
1)三上基樹:Final Report:Provincial Waterworks Authority in Thailand, JICA, p96, 1990.

(藤本 健夫)

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