5.11 漏水防止作業と不明水


Q214
漏水量を減らすにあたり、漏水防止作業で実施可能な範囲と管路を更新しない限り対応できない範囲について説明してください





  Key words:漏水、漏水調査、漏水防止作業、無効水量 、管路の更新

1.わが国の水道事業体の有効率と漏水
 1996年度におけるわが国の平均有効率は、給水人口10万人以上の水道事業体で平均89.1%以上となっているのに対し、給水人口5000〜1万人の小さい水道事業体では81.9%に低下する傾向にあります。
 この理由としては、規模の大きい水道事業体のほとんどが漏水調査を何らかのかたちで実施しているのに対し、小規模の水道事業体では、漏水調査を実施していない事業体が多いと考えられます。
 また、漏水防止作業は、各水道事業体の配水管の敷設状況や地形、そして事業体組織の規模などが異なっていることから一様に行われていません。しかしながら、漏水防止作業は地道な努力の積み重ねが重要であり、かつ、漏水調査作業と並行した諸施策の実施が不可欠です。

2.有効率向上への対応
 漏水防止計画を策定し漏水調査を実施する場合、その成果を漏水調査によるものと、それ以外の対策によるものとに分別 する必要があります。
 漏水防止作業以外の対策としては、老朽管などの更新、給水管の輻輳配管の整備や、配水管内水圧の適正化などが考えられます。これらの分析が、漏水防止作業などの対策が適切かどうかの判断基準となります。作業計画に沿って漏水調査を実施し有効率が計画どおりに上昇している場合は、細部の見直しのみで計画を続行するのが効果 的です。しかし、有効率の上昇が鈍化してきた時点で、工法、漏水調査作業の循環サイクル、組織体制などの計画を見直すことが必要です。
 また、有効率の向上がなぜ鈍化したのかを検討する場合、人的要素、技術的要素、機材的要素に分けて行うのが効果 的です。

3.単位あたりの無効水量減少への対応
 漏水調査を効率的に実施するには、ブロックごとの無効水量を捕捉し、必要な箇所に最大の投資を行うのが最も効果 的です。したがって、この調査方法は、ブロックの規模を小さくすることにより、無効水量 の把握が正確となります。
 また、漏水は施設内に均一には分布せず、さまざまな要因により極端な数値で点在する場合が多い状況にあります。このことは、F社1)が行った調査事例で、ブロックを細分化した場合、ブロックごとの単位 あたりの夜間最小流量が0.00〜5.31m3/H/kmと大きく相違することが報告されています。
 また、この単価あたりの無効水量は、数値が高ければ高いほど漏水の発見は容易であり、低い数値のブロックでは難しくなります。この数値が目標有効率達成時の数値(許容量 )を下回っているブロックが多いほど、調査対象が少なくなり対応は容易となります。
 この場合、難易ランクとそのブロック数が計画立案の最大要素となる場合が多く、現状の技術レベルでは、一般 的に単位あたりの許容漏水量が、0.50m3/H/km程度2)を一つの基準としてとらえています。しかしながら、施設規模や形態によってこの数値には差が生じることがあります。全国の統計では、大規模の水道事業体は有効率が高くても単位 あたりの無効水量数値は高く、逆に小規模の水道事業体は有効率は低いが単位 無効水量数値も低くなっており、漏水調査の方法については十分配慮する必要があります。

4.漏水の原因と状態からの対応
 漏水原因の大半が経年的な劣化や腐食の場合、根本的には管路の更新がなされない限り解決されず、その対応には長い時間が必要となります。
 この対応中の期間として、地上漏水や給水不良などの情報が多く寄せられるときは、調査体制よりも修理体制の充実を最初の課題とすべきで、また、地下漏水が多い場合は、漏水調査による早期発見、修理体制の確立を課題としなければいけません。

【引 用】
1)ウォーターサイド21,No.11,ライフライン情報社.
2)実務者のための漏水調査,全国漏水調査協会編:水道技術研究センター,1995.

(久保田照文)

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