5.11 漏水防止作業と不明水


Q215
途上国では不明水(unaccounted for water:UFW)という言葉を使いますが何を意味しますか。わが国の配水量 分析の定義と比較して説明してください





  Key words:不明水量、配水量分析

1.不明水量の意味
 不明水量とは、生産水量(以下、配水量)から有収水量(水道料金として回収された水量 )を差し引いた水量を指しています。途上国における水道事業の状態を端的に把握するため、しばしば使われる言葉です。わが国では、有効水量 あるいは有収水量という言葉を用いるのが常で、不明水量という言葉を使用することはありません。また、不明水量 のなかには有効無収水量(たとえば、水道施設の維持管理のために使用された洗浄用水など)が含まれているため、不明水量 =無効水量(漏水量など)とはなりませんので注意が必要です。図1は各年度の月ごとの配水量 と有収水量の関係を表したもので、斜線の部分が不明水量といわれるものです。なお、不明水量 を解明することが配水量分析作業であり漏水防止作業の目的となるものです。

2.日本における配水量分析の定義
 配水量分析は、水道事業を効率的にかつ円滑に運営するための作業であり、給水実態を的確に把握することを目的に行われるものです。配水量 分析を行うことによって、水道事業の経営および施設管理などの弱点を発見することが可能となり、健全な水道事業を図るための対策を見いだせることとなります。わが国における配水量 の分析作業は、おおむね表1(配水量分析)に基づいて行われています。図1(配水量 および有収水量の推移)を表1に記載されている分析項目および番号で述べれば、生産水量 が@配水量であり、有収水量はCとなります。図1に記載されている不明水量には、B無効水量 とD有効無収水量が含まれています。したがって、不明水量のみを知りえたとしても水道事業の実態を正確に把握することは困難であるといえます。

【参考文献】
1)厚生省環境衛生局水道環境部監修:水道維持管理指針,日本水道協会,1982.

(田口 徳男)

図1

表1

戻る    次へ

コメント・お問合せ