5.11 漏水防止作業と不明水


Q218
途上国に対する漏水防止対策(配水施設)の具体例を説明してください





  Key words:漏水、地上漏水、地下漏水、漏水防止対策

 漏水には、目視で確認が容易な地上漏水と、漏水の発見が困難な地下漏水があり、途上国では、配水管内の水圧が比較的低いことから、地下漏水が多く見受けられます。また、漏水の発生が多い管路は、一般 的に配水管より給水管が多いことから、途上国で漏水対策を立案する場合には、この点を考慮して計画を立てる必要があると思います。漏水調査の実施については、浄水場付近や配水ポンプ所の付近が比較的配水管内の水圧も高いことから、地上漏水件数が多く発生する可能性もあります。これらの地域を調査対象にすること、そして、比較的漏水の発見が容易な地上漏水の早期発見、早期修理のパターンを確立することが重要と考えます。また、地下漏水については、水圧が高い配水管や給水管から漏水が発生した場合、漏水音が大きく発見しやすいことから、浄水場や配水ポンプ所付近の地域を聴音棒や漏水探知機などの音聴探査方式による調査を中心に行うことが有効的と思われます。漏水調査の方法は、対象地域をまんべんなくかつ定期的に調査することにより、漏水の減少につながります。このような漏水調査方法を徐々に浄水場などの加圧施設から遠くの給水区域に拡大することにより、さらに漏水防止対策の効果 が上がります。
 なお、配水管網が整備されている給水区域では、夜間最小流量を測定するとともに、調査対象地域別 に管種や敷設延長などを考慮した許容流量を設定し調査することにより、許容量 以上の地域が発見された場合、音聴による漏水探査を行い、漏水防止対策のスピードアップが図られます。漏水防止対策は、漏水調査だけではありません。配水管台帳などの帳簿や漏水発生記録などの整備も重要であり、それらのデータを考慮して、配水管などの敷設替えを実施し、有収率を上昇する効果 にもつながります。以下に開発途上国に合った漏水防止対策を示します。

1.途上国の漏水防止対策の具体例
〈タイ地方水道公社(Provincial Waterworks Authority:PWA)の漏水管理計画〉
(1)概 要
 PWAは、バンコク首都圏を除くタイ全土の214の都市水道と600以上の農村水道に対して水道施設の基準の作成、設計、拡張工事などを担当しています。各施設の建設、拡張工事は、政府の補助金により進められてきましたが、近年その補助金もカットされる傾向となりました。そこで、施設が老朽化し、水圧などに耐えられないため配水管からの漏水増加、盗水やメーター故障などにより有収率、有効率に悪影響を及ぼしていることが判明したので、その対策として漏水管理計画を作成しました。
(2)基本計画
 全国平均漏水量31.7%に着目し、資源および資金のむだ遣いを減らすために、世界銀行ローンを利用して4年計画をかけ本格的な漏水防止に取り組みました。この計画は、調査、整備対象地区として国際的な観光都市、漏水率の高い都市のなかから60都市を抽出しました。目標値は計画最終年度までに漏水率25%以下としました。
 基本計画は6項目より成り立っています。
 1)現状分析。
 2)漏水防止機器の取り扱い方法などの技術研修を実施。
 3)配管図の整備。
 4)漏水防止作業の実施。
 5)バンコク本部より作業班を派遣し、漏水防止作業の指導、助言を行い問題点の解消に努める。
 6)各地方事務所より、月間作業報告書をバンコク本部へ提出を求め分析、評価する。
 以上の計画を進行するために諸外国からの技術援助が行われ、日本側からJICA専門家が技術指導、助言などを実施しています。
(3)漏水管理手法
 1)第1段階
  @可視漏水(露出管および地上漏水)防止作業:可視漏水は、各都市水道事務所(WW)の責任において発見したらすぐに修理する。また、修理後も漏水率が高い場合は、全国10カ所に設置されている地域事務所(RO)および本部運転管理部が協合し合い漏水防止策を立案する。
  Aメーター機能確認作業:WWはマスターメーターの機能を確認し、適正に作動していない場合は、ROに修理依頼する。また、同時に各戸メーターについても機能確認を行い、故障メーターは早期に点検、修理する。これらのメーター機能確認作業は1年に1回は必ず実施する。
  Bマッピング:配管図はROが整備する。図面整備の基本事項としては工事完成図および各仕切弁の詳細図作成、各WWの標準図作成などとなっている。
 2)第2段階
  @現況調査およびデータ整理
  a.ROおよび本部運転管理部は、マスターメーターの作動を適正化させる。
  b.ROおよび本部運転管理部は、夜間最小流量および夜間流量を測定する。
  c.各WWは、配水量および無収水量を測定し、毎月R.O.に報告する。
  AWWは、可視漏水修理のために雇う臨時職員の費用および漏水防止対策費用は予算要求する(予算化)。
  B可視漏水の調査、発見は、メーター検針員および集金員が行い報告する。
 3)第3段階
  @ROおよび本部運転管理部は、各WWの夜間最小流量および夜間流量の測定結果 を分析し、報告書を作成する。なお、可視漏水防止後の漏水率が目標値を上回る場合は、次のステップとして音聴調査を実施して地下漏水修理を目標値を達成するまで繰り返す。
  A配水管の敷設替え計画を行う。以上の計画を実行するために予算化を図る。

2.日本の対策との差異
 日本と途上国の漏水防止対策を比較するのは、漏水に対する認識度、経緯など大きく隔たりがあるので単純に差異を述べるのは難しいと思いますが、一例を表2に記述します。

(関口 貞男)

表1

表2

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