5.11 漏水防止作業と不明水
Q221 管路リハビリテーションを目的とした開発調査のなかで、漏水調査をどう扱うべきでしょうか。その手法と範囲について説明してください
Key words:漏管路リハビリテーション、漏水調査、漏水調査研修
一般的に途上国の主要都市の人口と市街化区域は急速に増大しています。したがって、配水管網の整備が間に合わず、給水量 の絶対量が不足しているため、給水不良地域が生じているのが現状です。また、このほか既存施設の老朽化が進み、漏水量 の増大が給水不良の原因の一つとなっています。したがって、管路リハビリテーションを検討する際に、漏水調査を緊急改善計画に組み入れるほうが妥当と考えます。管路リハビリテーションには、管網の整備、管路の更新が考えられますが、既存施設を改修して有効利用を図ることが早期に給水不良を補ううえで、財政的にも有効です。このため、管路リハビリテーションを目的とした開発調査のなかで漏水調査を実施することは重要な位 置づけですが、日本側および開発途上国側においても制約があり、調査内容にも限界が生じます。したがって実施内容は次のようになります。
1.開発調査のなかで漏水調査を実施する際に生ずる制約
開発調査は相手国の要請内容に基づいて実施することが基本となります。しかし、日本側および相手国側ともに次のような制約があります。以下に項目を記述します。
(1)日本側の要因
1)調査費用
2)調査期間
(2)相手国側の要因
1)技術者の不足
2)財政状態が逼迫している
3)維持管理体制が整備されていない
4)既存の水道システムが十分機能していない
2.漏水調査の手法
(1)管路リハビリテーション全体で必要な一般的調査項目
1)自然的、社会・経済的条件
2)組織、経営および財政状況
3)既存上水道システム
@水源
A浄水施設
B配水施設
Cポンプ設備
D水圧
(2)漏水調査
上記一般的項目調査終了後、資料の分析を行いますが、調査期間は通常、国内外作業を含めて全体で12〜15カ月程度であり、このうち漏水調査に費やす期間は2〜3カ月程度のため、調査対象区域全体の詳細調査は不可能です。相手国側と協議して、調査優先ブロックを2〜3カ所設定することが必要です。調査の内容を記述します。
1)現場事前調査
@配給水管の口径、敷設位置、敷設延長、材質
A弁類の設置状況および隣接施設の調査
B道路の状況および隣接施設の調査
C水圧測定
D各戸メーターの設置状況
2)図面の整備
@配水管図作成および既存図修正
配水管の口径、位置、材質および付属されている仕切弁、消火栓、空気弁などを記入する。
A詳細図作成および既存図修正
給水管の口径、延長、材質など配水管との関連および各戸メーターを記入する。
B仕切弁オフセット図作成
(3)漏水調査(各ブロック)
1)目視調査
@露出管(各戸メーター周辺、立上り管、および水管橋など)の漏水調査
A地上漏水(道路上、各家庭の庭および弁室内など)の漏水調査
B各戸メーターによる宅内漏水確認調査
2)音聴調査
@音聴棒による漏水発見
露出管、メーター、仕切弁および消火栓より漏水音を確認する。
A漏水探知機による漏水発見
(4)夜間最小流量測定
ブロック内の漏水残存量を正確に測定するためには、そのブロックと周りのブロックを完全に分離しなければなりません。
1)事前作業
測定作業に先立って断水確認および排水作業を行う。この作業の目的は次のとおり。
@ブロックの完全分離の確認
A仕切弁機能の確認
B測定時に濁水発生を少なくするための排水作業
C測定時の仕切弁操作手順の確認
2)測定作業(initial mesurement)
@流量測定
事前作業で確認したブロックを分離して、1カ所のみ流入バルブを開けてブロック内に流入する水量 を測定する。流量計は電磁流量計が望ましいが、経費の問題や現場の状況により超音波流量 計または水道メーターを使用する。また測定時、各戸メーターをすべて閉めるのが前提であるが、断水できない店舗や工場がある場合は、メーター検針も併用する。
A水圧測定
@の流量測定と同時に、少なくとも流入付近、中間および管末付近の水圧を測定する。
3)漏水修理(repairing)
(3)で発見した漏水を修理する。
4)測定作業(after repairing)
上記2)@、Aと同様にして、漏水修理後のブロックへの流入量および水圧を測定する。
5)データ整理、分析
3.漏水調査研修の実施
限られた期間内で漏水調査を実施することになりますので、相手国の技術者および作業員と行動を共にして研修を実施することが大切と考えます。研修内容としては、
(1)漏水調査を実施する意義について
(2)漏水調査の手法について
(3)漏水調査機器の取り扱い方法について
(4)調査結果の資料整理方法について
などの項目が考えられますが、漏水調査に対する認識度を高め、調査実施ブロックおよび他の地区においても相手国側技術者が継続した作業を行うよう指導したほうがよいと考えます。特に、上記2.(3)に述べた目視調査により発見した漏水については、早急に修理するよう提言します。
(関口 貞男、渋谷 進)