5.11 漏水防止作業と不明水


Q222
漏水調査の調査方法・規模とそれに必要な機器について説明してください。機材供与の要請があれば無償資金協力で供与できますか





  Key words:漏水調査、音聴棒、漏水探知機、相関式漏水探知機、機材供与、無償資金協力

1.わが国の漏水調査の方法
 漏水調査の方法としては、面の調査、線の調査、点の調査があります。
 これは漏水調査を段階的にとらえたもので、言い換えると発生している漏水を、ある区域(面 )で把握する調査、管路の区間単位(線)での調査、個々の漏水箇所(点)の調査となります。
 これは現在実施されている調査方法の基本となるものであり、施設や漏水の発生状況によってそれぞれ適した方法を採用する手法となっています。
 上記のとおり漏水調査は最終的に個々の漏水箇所を発見するために行われる作業であり、その発見作業における方法や用途により各種調査方法があります。また、それらを施設や漏水の状況に応じて段階的、複合的に組み合わせたものが漏水調査方法です。
 漏水調査方法としては、漏水を発見するために必要な標準的調査方法と、この方法を軸として管路選別 、漏水量の測定などを行う応用的調査方法があります。
(1)漏水調査計画の立て方
 1)基本的な漏水調査の流れ図(図1)
 2)調査区域の決定と作業工区
 調査区域が決定したら、次に1日の作業量や流量測定区画を考慮して、作業工区の決定を行います。1工区の大きさは、配水管の延長で2〜3km程度であり、これが1日の作業量 の基準です。
 3)調査方法の種類
   @面の調査方法
     漏水調査ブロックごとに流量測定を実施し、流量を把握します。
    大ブロック10km以上
    中ブロック4〜9km
    小ブロック3km程度
   A線の調査方法
     消火栓にリークゾーンテスターを設置し、調査地区内で漏水発生の危険管路を選別 します(弁栓音調など)。
   B点の調査方法
     漏水探知機を用いて、管路上の路面に伝搬する漏水音をキャッチします(音聴調査、相関調査)。
 4)漏水調査の方法
   @消火栓・制水弁・止水弁の音聴調査による漏水管路の選別
     管路に漏水が発生すると、これに伴う振動音が起こります。この音が管や水中に伝わり、制水弁や止水栓に二次的振動を与えます。もし、音聴棒によって制水弁や止水栓で音を聴いたときに、漏水による振動音がとらえられた場合は、その付近の管路で漏水している可能性が高いと思われます。しかし、音聴棒に何の反応もない場合は、漏水の可能性はほとんどありません。
   A漏水探知機による漏水地点の音聴調査
     管路や分岐部で漏水が発生すると、その漏水を音源とした振動音が発生します。この音が、地中を伝わり地表面 に微かな振動を与えます。これを地上でセンサーによってとらえるための機器が漏水探知機であり、この調査方法を音聴調査といいます。漏水探知機が調査している管路上の地面 で異常な音をとらえた場合、その地中の管に漏水の発生があると考えられます。そして、漏水地点に近づくと漏水探知機のメーター指示が大きくなり、ヘッドフォンの音も大きくなります。
   B相関式漏水探知機による漏水調査
     最も新しい漏水探知方法で、漏水音源を管上の2点でとらえ、この2つの音の到着時間のずれを測り漏水音源の位 置を調べる方法です。
    a.漏水の可能性がある箇所をはさんだ2点の制水弁、消火栓など2個のセンサーを取り付けます。
    b.2個のセンサーがとらえた音を波形相関機に伝送し、2つの波形の到着時間差を自動計算します。
    c.2個のセンサーから漏水地点の位置をL=(D−N)/2の算式によって計算します。
    d.Nはタイムディレイ(Td)、管内音速(V)を掛けた式で算出します。
    e.これらの諸計算を自動的に行い、インプットした管種・測定間距離などを総合して、漏水位 置をグラフィックパネル上に映します。同時に、記録用のコピーがとれます。

2.漏水調査に必要な機器
 漏水調査に必要な機器は表1のとおりです。

3.機材供与の要請があれば無償資金協力で供与できるか
 漏水調査を実施するための機材の無償資金協力は、相手国の実用に合った機器でメンテナンスのかからない機器を供与する必要があります。
 また、機器の供与だけでなく、人材教育についても、相手国の技術者を日本に呼んでの研修、日本人の専門家を短期派遣または長期派遣して技術移転を行うなど、並行して推し進めていく必要があります。

【参考文献】
1)谷口元:水道管路の漏水防止,水道技術研究センター,1992.
2)全国漏水調査協会編:実務者のための漏水調査,水道技術研究センター,1995.
3)厚生省環境衛生局水道環境部監修:水道維持管理指針,日本水道協会,1982.
4)増補版・配水管,大阪市水道技術協会,1993.
5)高有効率時代における漏水防止対策.ウォーターサイド21 ,1994.

(中之薗賢治)

図1


表1

表1つづき

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