5.12 井戸の計画と維持管理


Q226
相手国政府から井戸掘削プロジェクト実施の要請を受けて調査を実施する際、特にどのような点に留意したらよいですか





  Key words:井戸、井戸掘削プロジェクト

〈調査の留意点〉
 調査を実施する際、プロジェクトの背景、目的を十分に理解し、要請内容を十分把握することが肝要となります。プロジェクトの規模、内容は施設建設後の運転、維持管理費を考慮したものが少なく過大になりがちなのが一般 的ですので、現地調査において十分な調査を実施し、その結果をふまえ関係機関との協議などを行い、適正化を図ることが必要です。
 相手国政府からの要望と調査結果とが異なるケースの一つとしては計画給水対象地域、給水量 原単位の計画値、給水対象人口の予測値の差異があります。これは実生活状況と計画値の違い、社会増に対する見解(経済成長、開発計画)の違いによるもので、必要給水量 の設計値と実際量との間に大きな違いが出てくることとなります。このことが井戸の本数の増加や揚水量 の過剰につながっており、維持管理が適正に行えない要請となっているわけです。
 これらについての対応としては次の点に留意した調査を行い、その結果を十分に相手国政府に説明し、納得させることで解決されると思われます。
(1)対象地域
 開発計画の有無、開発の可能性(実現性、規模、内容)について調査します。自然、社会状況にも検討を加え対象地域の範囲を決定します。
(2)対象人口
 対象地域の規模、開発内容による人口の分布状況、および人口増加率(自然増は全国平均レベルとし、社会増は上記の結果 をふまえる)を考慮して決定します。特に対象人口はプロジェクトの規模内容を決定する大きな要因であるため、現地調査を必ず行います。
(3)給水量原単位
 相手国の基準設定値に沿うのが一般的ですが、設定値が国の目標値であったりして実使用量 とかけ離れていることが多くみられるため、地域特性を考慮したり、実使用量 の調査・検討を行う必要があります。
(4)財務、経営状況
 担当機関の経営状況を把握し、料金徴収について特に留意する必要があります。有収水量 の増加についての提言などを行います。
(5)維持管理体制
 運転維持管理の体制、組織、現状を把握し、新しい施設に対応できるかを判断します。この面 から規模設定をも考慮する必要があります。

(井川 雅幸)

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