5.12 井戸の計画と維持管理


Q230
相手国政府にも住民にも、援助で建設した井戸を維持管理する費用がない場合に、どう対処すべきですか





  Key words:井戸、維持管理費用、故障井戸

1.相手国政府および住民が維持管理費用を負担できない場合
 現在、相手国政府および住民が井戸の維持管理費用を負担できない場合、援助にて井戸建設を計画することは特別 の場合を除きなくなりつつあります。過去、人道上により手掘り井戸や浅井戸といったものを緊急に建設した事例は多いですが、これらが満足な状態で継続使用されている箇所ははなはだ少なく、手掘り井戸においては、周辺が家畜などの糞尿により汚染され地下水まで影響を受け、水系伝染病の蔓延の原因となっていたり、水量 が減少または枯渇したりしています。また、浅井戸においても水質の悪化や手押しポンプ据え付けの浅井戸において1年間に約9割のポンプが破損、故障して使用不能となったとの報告もあります。
 こうしたことから井戸建設計画策定時に地域住民に対して衛生教育や維持管理方法などについての指導や設備、機器が自分たちのものとの認識をもたせることと組織づくりや参加意識までを考慮しなければなりません。井戸建設計画時において特別 な場合を除いて、上記のような指導などを受け入れる意識、体制がないところへの援助、協力は原則として行うべきでなく、逆に援助を行う条件としては住民の参加意識があり、組織、体制の構築が可能であることです。
 技術的な対応については以下に示すとおりです。
〈維持管理の方法〉
 井戸の維持管理に必要な費用は、@揚水のための動力費(自噴井戸を除く)と動力源の維持管理費、A井戸そのものの維持管理費です。人力や家畜力を利用して動力費がまったくかからない浅井戸でポンプが設置されていない井戸においてさえ井戸底の定期清掃、井戸孔壁の修理などが必要であって、長期間使用するためにはどうしても維持管理費用を計上する必要があります。
 まず、基本的に水は天からの恵みであるがそれを得るためには何らかの代償が必要であるとの認識、つまり水は購入すべきものであるとの認識が必要となります。各井戸、各共用栓の利用者単位 で小さな組合的組織をつくることが望ましく、この末端組織は部落、地区で水道事業を運営する上部組織につながるわけです。
 組合的組織での働きとしては上部組織から指名(選出)された水管理人が料金徴収を行い設備の維持管理を行います。料金の設定の基本になるものは管理人の給与と補修費からなり補修費は積立てします。なお料金支払い不能者(家族)に対しては物納もしくは労働力提供を義務づけることによって公平な運営ができ、最低限の費用で維持管理を行うことができるようになると思われます(図1)。

2.建設計画時に維持管理費用が見込めないか少ない場合
 建設計画時点で維持管理をする費用が見込めないか、少ない場合には次のような計画案を策定します。
(1)井戸の規模、構造、揚水施設は住民が維持管理可能なものを選定する。
(2)自噴井として仕上げる。
(3)井戸や施設をメンテナンスフリータイプとする。
(4)ポンプは手動の手押しポンプとする。
(5)風力、ソーラーなどの自然エネルギーを動力として検討する。 

3.故障井戸の利用方法
 すでに建設された井戸が維持管理する費用がなく放棄されているときは、現場で次のような手法を用いて井戸の使用方法を考えます。
(1)水中モーターポンプの設置井戸でポンプが使用できない場合
 燃料費や電気代が払えないケース、スペアパーツの補給が困難なケース、技術的に補修ができないケースなどでモーターが使用できない場合は、モーターポンプを除去したケーシング内を一回り小さな口径のパイプや竹筒などで1〜2m程度の容器をつくり、紐で降ろして井戸水を汲ませるか、ハンドポンプを設置して使用する。
(2)ハンドポンプの設置井戸でハンドポンプが使用できない場合
 ハンドポンプの故障(補修部品の欠如や補修不能)や破壊された場合にはケーシング中を有効利用して、上記(1)同様、細い筒状の容器を紐で上下させることにより井戸水を汲ませる。

(井川 雅幸)

図1

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