5.12 井戸の計画と維持管理
Q231 井戸ポンプの種類および選定の考え方を説明してください
Key words:井戸、井戸ポンプ
1.井戸ポンプの種類
動力の種類によって分けられます。
(1)人力によるもの(手押しポンプ、足踏みポンプ)
これらのポンプは揚水機構部が同じ構造であり、シャフトを上下させるのに手を使うか足を使うかの違いのみで、据え付け場所の生活習慣によって選択されています。故障の多くはハンドルおよびハンドルジョイント部での破損事故です。
(2)モーターによるもの(バーチカルタービンポンプ、水中モーターポンプ)
1)モーター部が地上にあるもの:バーチカルタービンポンプ
2)モーター部も水中にあるもの:水中モーターポンプ(うず巻、斜流、軸流)
(3)井戸の構造によるもの
水中モーターポンプが浅井戸用(下吸い込み形)と深井戸用(上吸い込み形)のものがあります。
一般的なポンプ分類は表1のとおりです。
2.井戸ポンプの選定方法
(1)動力源(電気、電動機)がない場合
手押しポンプ、足踏みポンプを使用します。
井戸口径100mm以上で水位30m以浅の場合、手押しおよび足踏み式のサイクルタイプの人力によるこれらのポンプを使用します。水位 が30m以深で50m以浅の場合、これらの改良補強型のインディアンマーク1、2、ベルニエポンプ、ベロースポンプなどを使用します。動力を得ることが難しく給水対象人口の少ない地方村落の井戸で使用します。構造が簡単で故障が少なく維持管理が容易であるという利点があります。正常な取り扱いを行えばほとんど故障もなく、故障の場合でも構造が簡単で部品数も少なく(故障の多くはパッキンなどの摩耗)現地で容易に補修可能であるなどの利点もあります。
(2)動力源(電気、電動機)がある場合
バーチカルタービンポンプ、水中モーターポンプを使用します。
バーチカルタービンポンプは井戸口径150mm以上で100m以内に運転水位がある場合に使用できます。モーターが地上部にあり揚水管で孔内に降ろされたうず巻ポンプを管内に通 したシャフトで回転させるもので、モーターの補修が容易でありポンプ、シャフトなどについては機械的修理のみでメンテナンスができるメリットがあります。しかしシャフトの潤滑油の処理問題、ポンプ室の建設、騒音などから使用が減少傾向にあります。
水中モーターポンプは井戸口径100mm以上、運転水位が100m以上でも使用でき、最もポピュラーなポンプです。ポンプ、モーターともに水中で稼働させる縦軸ポンプで、うず巻、斜流、軸流ポンプがあります。井戸で使用される場合、不圧帯下層を対象とした浅井戸と被圧帯水層を対象とする深井戸では水中モーターポンプはタイプの異なったものを使用します。
浅井戸の場合の構造例とポンプ設置方法、および深井戸の場合の構造例とポンプの設置方法は図1のとおりです。
(3)現在、深井戸で一般的に利用されている水中モーターポンプの特徴
1)地上建設費が安い
ポンプ、電動機とも地下に納まるので、地上部には電源設備の用地確保ができれば、特にポンプ用上家を設ける必要がありません。
2)運転が静かである
ポンプ、電動機とも水中で運転されるので、機械的な騒音が地上に伝わることが少なく、騒音が問題となる住宅地でも運転できます。
3)総合効率が高い
水中モーターポンプは、電動機全体が水中に入り、かつ回転子の周りに水がある構造のため、回転時に液体摩擦損失があり陸上電動機に比べ効率が低下します。しかし、中間軸などがなくポンプ効率が向上するため、総合効率は高くなることが多くあります。
4)自動運転が容易である
起動時に呼び水操作が不要なため、運転の自動化が容易です。
5)保守点検が困難である
モーターが水中にあるため、絶縁抵抗測定以外の保守点検が困難です。しかし、最近の水中モーターポンプは、長期間保守点検なしで使用できるようになってきました。
6)速度制御が難しい
一般にかご形誘導電動機が使用されるので速度制御が難しいようです。
【出 典】
1)水道用ポンプマニュアル,日本水道協会,p9―10,1992.
【参考文献】
1)深井戸の管理技術マニュアル,日本水道協会,1992.
2)地下水ハンドブック,建設産業調査会,1980.
3)山本荘毅:地下水調査法,古今書院,1983.
(井川 雅幸)
表1
図1