5.13 設備・機器の修理とワークショップ


Q234
設備・機器を輸入に頼っている途上国における修理の考え方を説明してください





  Key words:設備・機器の修理

1.修理を考慮した設計コンセプト
 設備・機器の修理に関する考え方を説明するにあたって、まずその設備・機器が構成している給水システムの計画時における設計コンセプトについて述べる必要があります。
 いかなる事業でも計画段階で、当然のことながら、修理を含む維持管理のあり方を念頭に置いた設計コンセプトがつくられなければなりません。わが国で、一般 的とされていて維持管理が容易と考えられている機器類によって構成される給水システムでも現地の自然や社会の環境、特に給水事業を実施するセクターの財務や操業要員の質や数を含む体制などによりきわめて維持管理が困難な給水システムとなってしまう場合がありえます。

2.現地事情への配慮
 いうまでもなく、事業が実施される対象国での現地事情を十分考慮しなければなりませんが、とかく等閑視されがちです。計画時に、修理を含めた維持管理について十分な検討がなされたのにもかかわらず、適当な維持管理案がない場合には、事業の実施妥当性すらがそれによって損なわれ、事業のキャンセルという短絡的な結果 をもたらすこともありえます。

3.対処方法
 このため、よくいわれることですが、給水システムの現地化を極力図ることです。現地化とは、竹で管路をつくるというようなことでなく、現地にあるものを用いて、給水システムに従来使用されているものや使用しやすいものを構成機器とし、現地の運用方式で長所とされる点も採用することで、好結果 を得ています。

4.輸入品事情
PVC管や建材などはかなりの数の国で生産され、流通しており、品質や価格も満足される条件を備えてきているのに、いまだ高品質を理由に輸入を使用した結果 、現地事情にそぐわぬケースも多々あります。しかし、どうしても輸入品に依存しなければならない機器が存在することも事実です。輸入品といっても需要に応じてそのつど発注して輸入するものと、恒常的にその国で輸入されていて現地市場に流通 しているものとがあります。また輸入先も、近年では地域経済圏の発達で、個々の国で得意分野を分担して相互に補完関係をもち、計画地域周辺国が多品目をカバーでき始めており、輸入品をすべて遠隔の先進工業国製品と限定しない考え方が必要です。かかる機材の利用は、価格的にも部品の入手を容易にし、それらの取り扱いに習熟した現地スタッフによって修理を簡便にしています。いずれの国からにせよ、それら輸入品メーカーの現地サービスステーションや代理店の存在は重要です。

5.維持管理体制の重要性と修理の関係
 施設規模にもよりますが、給水事業を実施するセクターの行政計画レベル、具体的に修理などの操業運営にかかわる事業現場、そして受益住民、いずれもが完成された施設を構成する設備、機器の維持管理に必要な理解と対応に努めることです。すなわち、修理は計画時点からの行政レベルにおける配慮、操業運営にあたって予防保全への手立て、そして受益者自らの費用回収を含む給水事業への理解と協力などが必要です。これらの国々の現状では、住民負担となる費用全額を少なくすることが安定した安全な給水を行ううえで不可欠です。しかしながら、企業化された給水事業でない限り、小規模給水においては操業費用のみでなく、先行きの設備更新費用までも考慮した費用回収が必要です。事業の検討段階で給水を受けることとなる住民が、貧困ゆえにこれらを考慮した修理部品の購入を含む費用負担の見通 しがないことで、上述のごとく事業が具現化されないこともあります。現実的な修理を含む維持管理体制こそが、確実な事業形成の主軸とみられているからです。

(高松 幹二)


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