5.13 設備・機器の修理とワークショップ


Q236
井戸案件の実施において、ワークショップを整備し、よく機能している事例を示してください




      Key words:井戸、ワークショップ

1.井戸の種類とその特徴
 井戸を水源として利用する給水事業には、小口径井戸にハンドポンプを備えて揚水を行う簡易なポイントソース型と、同じく井戸を水源とした動力化ポンプにより揚水する貯水槽などを備えた管路系型のものとがあります。
 これらは、地下水利用にあたっては、季節によって地下水位が大きく影響されず、地表からの汚染の危険のないものが求められます。これら条件を満足させる浅井戸による不圧地下水が利用できる地域もありますが、一般 に汚染防止の構造がとりやすく、旱魃の影響を受けにくい深井戸を利用した被圧地下水を水源としています。これらは、比較的井戸深度も深く、揚水機は、地下部分も高揚程となり、ハンドポンプにしても重装備型となります。これらの水源井の建設にあたって、水理地質学的検討をはじめ、探査技術の体制を整えて、まったく新規に地下水開発事業として井戸掘削部門の創設から始めるものと、すでに地場の地下水開発産業が成育していたり、その国の行政が地下水開発部門を擁しており、自力でそれなりに運営努力しているパターンとに分けられます。わずか数本の水源井が必要な給水事業に大がかりな井戸掘削機材を用意するのは論外として、上述の2パターン、すなわち新規に井戸掘削機材の入手から始まる給水事業と、いずれにせよ水源井を完成させてそれを利用する体制のもとで行われる給水事業とでは、ワークショップ整備上の相異があります。

2.新規に地下水開発から始める場合

 前者は、修理の対象が掘削機材をも含む特性上、多くの補機や消耗の激しい深井戸建設用機材と給水施設機材の両者が対象であり、それらの内容も特殊となり、運営管理体制もきわめて慎重な組織づくりから行うことが必要となります。

3.従来からの地下水開発事業が機能している場合
 後者の場合でも、地下水資源を利用する視点に端を発する考えが重要で、配水施設や給水関連の維持管理について通 常の配慮はもちろんですが、特にワークショップの整備にあたって水源を深井戸としていることへの十分な配慮が重要です。深井戸ポンプの保守、点検に関する体制や老朽化した水源井のリハビリテーションへの対応などを考慮した機材に対しての装備や要員の配備が必要です。水源井をはじめ、給水施設のインベントリーは不可欠であり、かかる事業のなかで、業務へのパソコン導入は効果 的といえます。安全で、安定した給水を行うための緊急プログラムのもと、増大する施設数に対応するためにも、ハンドポンプを利用する簡易な施設はもちろん、企業形態の管路系給水施設でも受益者参加を含めた地元レベルで可能な維持管理体制が求められています。

4.運営維持管理体制
 このため、小規模な施設では受益者のなかから選抜された操業要員への教育や、交換部品の購入を容易とするための積立金の用意など、費用回収をはじめこれらの管理を行う女性を含む地元民により構成される委員会制度が世界各地で組織されてきています。規模の大小を問わず、ワークショップの機能発揮は、費用回収と不可分な関係にあります。このような状況は、かかる井戸水源関連のケースに限ったことではありません。とはいえ、予算さえあれば万事解決ということではなく、被援助国側の維持管理についての体制や社会経済など国情によることはもちろんです。

5.実際の事例
 上述の事例として、セネガルにおける維持管理体制とその背景を表1に示します。
 都市給水に関しては、都市上下水道計画企業(政府全額出資)が、都市上下水道運営企業(政府半額出資)に維持運営を委ね、量 水器の修理機能もあるそのセントラルワークショップが1カ所首都にあり、全国をカバーしています。また地方給水に関しては、水利省維持管理局が直轄しており、セントラルワークショップが国土の西北端の地方都市に1カ所にあり、現在はここが全国に散在する施設をカバーしています。ただし、その傘下には東部と南部にその周辺地域における簡易な維持管理を行う支所が2カ所あります。地方給水に関しては、現場での簡易な修理や中央への通 報、修理費用の負担準備など、各施設受益者によって水管理委員会が組織され、費用回収にもあたっています。
 なお現在、既存給水施設の維持管理を推進するため、地方に従来の支所より高いグレードの機能をもつセンターに準じたワークショップの建設が進められています。また、組織された委員会の運営の見直しによって維持管理業務の民営化の検討も始まっています。

【事例プロジェクト名】
セネガル「地方都市給水網整備計画」
セネガル「地方水道整備計画」
セネガル「地方給水施設拡充計画」

(高松 幹二)

表1

戻る    次へ

コメント・お問合せ