5.14 整備の費用


Q238
わが国の援助で途上国の水道整備を実施する場合、建設単価が高くてもしっかりした施設をつくるべきか、低くして普及を促進すべきか、どちらの考え方をとるべきですか




        Key words:水道整備、建設単価、段階的開発

〈水道整備にかかわる施設の規模および事業費の規模〉
 途上国の上水道整備にかかわる施設の規模(質的・容量的)および事業費の規模の検討に対しては以下に示す項目の検討が考えられます。
(1)水道整備事業の実施機関(事業体)と十分協議を行い基本設計コンセプト(基本思想)を確認することが重要です。Q132にも記述されているように、当該国および事業実施機関が置かれている公共事業経営環境に合った適正な設計概念を基本とします。一般 に途上国は財政環境には恵まれず、プロジェクト投資額に制限がある場合が多いと思われます。このような場合、プロジェクトを実施可能に導くため、事業費を抑える方式を優先する必要があります。言い替えれば、低コストによる施設を計画し、給水の普及を促進する方式がとられます。
(2)途上国では、水道整備プロジェクトは優先インフラストラクチャー事業であり、緊急に実施が求められる公共事業の一つであるため、計画倒れにならないことが重要事項となります。このためには、プロジェクトコストが過大にならないよう十分に考慮する必要があります。具体的には、技術および財政の両面 で実施の妥当性を確認し確実な実施を進め、さらにシステム・施設の建設を早期に完了するためには、実務的な基本設計思想が必要となります。
(3)対象プロジェクトが置かれた建設環境(地勢および地形など物理的環境)によっては、技術的・財務的最適案を採用しても、施設建設費がかさむことにより総事業費が高くなることがあります。このような場合、財務面 からみて実施妥当性が証明されず(アンフィージブル)、計画の実施ができない結果 が生まれます。計画目的を達成する代替案としては、プロジェクトの実施を段階に分け(段階的開発)、初期の投資額を少なくして財政的インパクトを小さくすることにより目的を達成する方法がとられます。システムの構築を段階的に実施することとなり、目標達成時期は遅れますが、1段階の投資事業費が低くなるため、一時の投資によるインパクトが弱まり実施の妥当性が証明されることが可能となります。

 以上、わが国の援助に限らず途上国の開発プロジェクトの実施計画策定に対しては、当該国の置かれた財政環境に注目し、実施の妥当性を技術面 および財政面から十分に検討し事業が実施可能となるプロジェクト規模・内容を策定する必要があります。

(佐々木照治)


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