5.14 整備の費用


Q240
途上国の整備単価の大まかな目安を知るために、わが国の単価から類推するにはどうすればよいですか




      Key words:水道整備、水道整備単価、事業費概算

〈水道事業整備プロジェクトの事業費算定〉

 大まかな目安を知るために、システム開発単位あたり(m3/日)、(/m)の単価を類推することは不可能ではありませんが、事業費はプロジェクト環境および整備条件によって異なること、またこのような数値は、条件を伴わずに一人歩きするおそれがあることなどのため、単価を示すことは危険であり十分な注意が必要です。
(1)一般的に、いまだ水道普及が十分でなくシステム整備が行き渡っていなくて、近年水道整備事例が多い整備途上国(インドネシア、タイ、フィリピンなど)では、類似整備事業からシステム開発水量 単位あたり(m3/日)、パイプ敷設工事管種・管径単位あたり(/m)、あるいは給水対象人口あたり(/capita:人)の整備事業費標準値を分析・算出して用いることができます。これらをわが国の同種事業費と比較し、同地域近隣諸国の整備計画に応用可能です。
(2)類似整備事業例がなくて、わが国の事例から整備単価を類推する方法としては、以下の手法が考えられます。
 1)当該途上国で入手可能な工事単価を用いて、土工・コンクリート工・道路復旧工など単純建設工事費を試算して、わが国の同種工事費と比較し、この比率を可能な限り応用する。
 2)さらに、特殊工事についても入手可能な工事単価を用いて同様に工事費を試算し、わが国との比率を求める(表1参照)。
 3)途上国対象水道整備事業の組成内訳・工種規模として、水源開発から浄水施設建設、配水・給水施設建設など工種・工事別 に事業規模を概略計算する。
 4)上記で求めた各種別ごとの単価比率を用いて、可能な限り対象整備事業の内訳工事ごとの標準単価を試算する。
 5)上記4)の標準単価を用いて、概略工事規模に対する必要工事費を算出し積み上げ事業費総額を求める。
 6)対象事業内容、事業規模ごとに整備事業を種類分けし、わが国の同種整備単価と比較し、上記工事種類別 に比較しこれらを総事業費算出にフィードバックする。
 以上はあくまでもたいへん大まかな概算事業費の算出の試算方法であり、プロジェクトの立地環境が異なる途上国とわが国の水道整備事業実施例と比較することは難しいと思われます。
(3)類推ではなく通常行われる工事費・事業費算出方法例は以下のとおりです。
 1)開発途上国では、一般的に水道関連資機材の標準単価表の類は手に入らない。また、ごく一部の途上国を除いて、土木建設工事の標準単価、さらに日本式な標準歩掛(単位 作業量に対する所要作業員数)は望めない。したがって、土木・建築工事に関する建設事業費の単位 となる個々の工事単価を概算し、さらにこれも概算・試算した必要工事量とから工事対象施設の工事金額(概算)を積み上げる。なお、資機材費は原則として価格見積りを依頼・入手してこれを用いる。
 2)各工種別に1)の工事金額を概算し積み上げ、総体直接工事金額を算定する。
 3)事業実施者・事業主体機関と協議して事業管理費および予備費などを算定し、総事業費の一部とし積み上げる。
 以上、途上国においても、事業費概算の手法は原則としてわが国国内方式と変わりません。異なる点は、各資機材単価および工事単価などの標準価格の入手が容易でないということでしょう。

(佐々木照治)

表1

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